愛される学校づくり研究会

お母さんは学校の応援団長

★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されていた斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。

【 第55回 】お母さんが学校や先生に伝えたいこと(4)

◆ジェネレーションギャップを知る

現在の20代は「スマホ世代」です。いえ、20代だけでなく、今では幼児から高齢者の方々まで、日常的にスマホを使っています。
 以前、「今の若い子たちは、何でもすぐに『検索』する」と聞いて、なるほど、そうだなと思い当たる節がありました。もちろんわが子たちもそうですし、若くはないですが、私も検索機能はよく使います。
 スマホがあれば、どこでもいつでもすぐに検索できる、ということは、私たちは即時性を重視するようになっているということだろうと思います。子どもたちは、「じっくり考える」ということを面倒に感じて、思索するなんてことはしなくなってしまうかもしれませんね。

また、若い世代は「郵便」もほとんど使いませんし、「FAXは見たことがない」という人もいます。 そして、人とのコミュニケーションはSNSを通じたテキストのやり取りで済ますことが普通なので、電話(会話)でのコミュニケーションを苦手だと感じている人も多くいます。

このように、中年層以上の人から見れば「当たり前」のことが、若年層にとっては「未知の世界」だということがたくさんあります。そのことを、中年層以上の人たちは知っておくべきです。
 「未知の世界」のことをあれこれ言われても、わからなくて当たり前、できなくて当たり前だと、大人が知っておかなければ、若い人たちとの溝はずっと埋まりません。

子どもは、未来の保護者になります。
 彼らが子どもを育てるときは、きっと自分がどうやって育ってきたのかという、自分の育ち方を引き継いでいくでしょう。
 あと10年もすれば、保護者の価値観も今とはすっかり変わってしまっているかもしれません。
 ジェネレーションギャップがあることを知り、それを意識しながら、子どもたちと接していけるといいですね。

◆「指導」という言葉

学校では、「指導」という言葉がよく使われます。先生方も日常的に使っておられるでしょう。
 文字どおり、「教え」「導く」のが先生の仕事ですから、業界用語のような感じで、わりと気軽に使われているのを耳にします。

しかし、業界の外にいる私には、「指導」という言葉には、重い責任を伴う言葉という印象があります。
 人を「指導する」ということは、「正しい道」がどこなのかを知っていなくてはなりません。
 その道へ導くための方法も知っていなくてはなりません。
 導く人たちがちゃんとついてきているかどうかを確認し、ついてこられない場合はどうしたらよいのかも考えなければなりません。
 そしていつでも、自分が導こうとしている道が正しいのかどうかを自問自答する必要もあります。
   「指導する」ということはつまり、自分の人間性が問われると思うのです。
 ですから、そうそう安易に使える言葉ではないな、という印象を持っています。

業界用語的に使っている言葉は、外の世界から見ると違和感を持たれることがあります。
 例えば、保護者会などで業界的な感覚で使った言葉が、そのとおりに受け取られず、誤解を受けることもあるのです。
 いらぬ誤解を生むことを避けるためにも、「外から見ると、どんなふうに見えるかな」という視点を持っていただけるとよいのではないかと思います。

◆わが身を振り返る

先生(だけでなく、親もそうなのですが)は、子どもたちにたくさんの指示を出します。
 「ノートはきれいに書きなさい」「忘れ物をしてはいけません」「時間は守りなさい」「友達と仲良くしなさい」「人には親切にしなさい」・・・
 それ、あなた自身はできていますか?

人間ですから、いつでも完ぺきではいられませんね。私自身も反省しなければならないことばかりです。
 ですが、そのような自分でもきちんとできないことを、毎日当たり前のように子どもたちに要求している、という事実を忘れてはいけないのではないかと思うのです。

もちろん守らなければならないルールやマナーを教えることは必要です。でも大人が一方的に子どもを責めるのはフェアじゃないと感じます。
 自分のことを棚に上げっぱなしにしないで、時には子どもと同じ目線に立って、自分の行いを振り返ることができるといいなと思います。

◆背中を見せる

もう一つ、大人が子どもに言う定番の言葉があります。それは「勉強しなさい」です。
 「本を読みなさい」「ゲームばかりしてはいけません」「スマホの使い過ぎ」…
 これらも、わが身を振り返ると耳が痛くないでしょうか?

「指導するということは、自分の人間性が問われるのではないか」と前述しました。
 私はなにも、聖人君子のようになれ、ということが言いたいわけではありません。
 そんなことは無理だと知っています。大人がすべてそんな立派な人ばかりの世の中はあり得ませんし、いろいろな人がいるからこそおもしろい社会になるのだと思っています。
 ただ、大人になっても「学ぶというのは楽しいことだ」ということを体感している人の言葉は、きっと子どもたちの心に伝わるだろうと思うのです。
 昔から言われる言葉に「背中を見せる」ということがあります。
 まずは私たち大人が、学びを楽しむことを率先垂範できるようになれるといいですね。

(2017年10月30日)

斎藤さん

●斎藤 早苗
(さいとう・さなえ)

愛知県在住 の3人の子供たちの母。
小牧市立小牧中学校にて、2014年度に、開校以来初めての女性PTA会長を務めた。
2012年春、玉置崇先生が校長として小牧中学校へ赴任されたのを機に、学校HP内の「PTAの部屋」の自主運営を始め、3年間にわたり、PTAの各委員会活動だけでなく、学校HPで発信される「学校の想い」に応えながら「保護者の想い」を発信して、学校と先生を応援してきた。
学校と保護者の温かい交流がある「愛される学校」が、全国に増えるといいなと願っているお母さん。