愛される学校づくり研究会

お母さんは学校の応援団長

★このコラムは、小牧市立小牧中学校のホームページ「小牧中PTAの部屋」を運営されている斎藤早苗さんによる保護者コラムです。「愛される学校づくり研究会」から強くお願いして、保護者の目から見た学校や教育について執筆していただくことになりました。ご自身は「私は学校の応援団長」と称しておられますが、さてどのような切り口で学校教育に迫っていただけるのでしょうか。とても楽しみなコラムです。

【 第24回 】「愛される学校づくりフォーラム」に想う(1)

◆「愛される学校づくりフォーラム2015 in 大阪」開催

2月21日(土)快晴の大阪で、「愛される学校づくりフォーラム2015 in 大阪」が開催されました。
  全国各地から参加者をお迎えして、会場は満員御礼。熱気あふれる一日となりました。
  今回で5回目となる当フォーラムですが、毎回趣向を凝らした内容で、多くの学びが得られるということで、リピーターの参加者も多いそうです。
  今回のフォーラムでも「午前の部」「午後の部」ともに、愛される学校づくり研究会が、日ごろどのような研究を行っているのかを、皆さんにわかりやすくお伝えするプログラムとなりました。
  保護者である私でさえ、楽しく学ぶことができたのですから、参加者の皆さんの多くは先生方ですし、きっとたくさんの学びをおみやげにできたのではないかと思います。
  それぞれの学校に戻って、学びのおみやげを、ぜひ他の先生方におすそ分けしていただけるといいなと思っています。

◆フォーラム参観記

私は、幸運なことに、フォーラムの【午前の部:「愛される学校のつくり方」提案と協議】に、「保護者代表」という立場で参加させていただくことができました。
  午前の部では、5名(4名の現役校長と1名の元校長)の会員による「愛される学校のつくり方」の実践提案がされ、その提案について6名のパネリストが協議をしました。
  「愛される学校のつくり方」の実践提案は、次のとおりです。

  • まずは従業員満足度から  岩倉市立岩倉中学校長 野木森広先生
  • 私の学校経営  一宮市立木曽川中学校長 平林哲也先生
  • 「学校の見える化」で見せるものは  一宮市立尾西第三中学校長 長谷川濃里先生
  • 授業を基盤とした学校づくり  知多市立八幡小学校長 山田純一郎先生
  • 「腕三分・根気七分」の初任者指導  津市立倭小学校・拠点校初任者指導員 中林則孝先生

ご覧になってお分かりのとおり、すべての発表者が校長先生です。(中林先生は元校長)
  フォーラムに参加できなかった読者の皆さんのために、簡単に、各提案をご紹介します。

まずは従業員満足度から
     〜岩倉市立岩倉中学校長 野木森広先生

野木森先生は、従業員(教職員)の満足度を上げるための仕掛けを、いろいろと実践されてきました。
  組織の意思決定は「トップダウン」で行われることが多いですが、岩倉中では「ボトムアップ」で現場の教員の意見を吸い上げるためのプロジェクトチームが作られました。
  このプロジェクトチーム結成により、教員自身が自分たちの働き方を見つめ直し、改善するための提言にまとめました。

私の学校経営
     一宮市立木曽川中学校長 平林哲也先生

平林先生は、長年の校長職経験から、保護者に学校の思いが伝わっていないことを痛感しておられました。そこで、学校経営の核となる部分をキーワード化し、学校HPをフル活用して、わかりやすく伝える工夫を実践されています。
  学校HPの記事は、学校の様子を紹介するものだけでなく、「校長室」のページに、校長の思いや考えを「毎日発信」しておられ、保護者や地域の人々の学校に対する信頼につながっています。

「学校の見える化」で見せるものは
     一宮市立尾西第三中学校長 長谷川濃里先生

長谷川先生も、保護者の学校への理解不足に悩んでおられました。その解消のために、学校HPをうまく活用されています。
  まず保護者の学校への関心度を、「協力層」「理解層」「どちらでもない層」「やや批判層」「批判層」の5つのカテゴリーに分類し、一番大きな「どちらでもない層」の中から「理解層」への引き上げを考えられました。
保護者対象の学校評価アンケートの結果をすべて(クレームも含む)公表し、意見に対する学校の考え方や対応も、きちんと学校HPに掲載しています。

授業を基盤とした学校づくり
     知多市立八幡小学校長 山田純一郎先生

山田先生は、赴任一年目でありながら、学校の抱えていた問題点をすばやく見つけ、一番の基本である「授業」に焦点を絞って学校づくりを進めてこられました。
  学校全体で「授業規律」を統一することを目指したことで、子どもたちにも落ち着きが見られるようになり、並行して現職教育に取り組むことで、先生方の意識も変わってきています。

「腕三分・根気七分」の初任者指導
     津市立倭小学校・拠点校初任者指導員 中林則孝先生

中林先生は、校長で定年退職された後、津市の新任者指導員をされています。校長として学校経営に関わられていた経験から、初任者に「最初から、あれもこれも欲張ってはいけない。今、できること、必要なことを、確実にやること」を明確に伝えておられます。
  初任者に必要なのは、「教材研究」や「指導案つくり」ではなく、子どもたちへの「繰り返しの言葉かけ」や「徹底できるまでの確認」だとして、写真を使ってその場面を見せながら初任者に指導し、通信「教室はドラマ」を発行して、担当する初任者全員に情報を提供・共有しています。

◆「愛される学校」とは

5つの提案発表の後、パネリストによる協議を行いました。
  パネリストの顔ぶれが、またスゴイのです。研究会の会員である校長先生や教員や企業社長、大阪市教育委員会の課長、大学准教授、そして保護者。多種多様な人選です。
  協議のトップバッターとして、私は「どこの学校の保護者になりたいですか?」という質問を受けました。
  5名の提案はどれもすばらしく、甲乙つけがたい実践ばかりです。私は正直に「5つが全部混ざった学校の保護者になりたいです」と答えました。司会の玉置先生には「それは欲張りです」と言われてしまいましたが(笑)

しかし、本当に「欲張り」なのでしょうか。
  私は小牧中の保護者ですから、小牧中がこのような5つの取り組みに近いことをやっていることを知っています。おそらく、多くの学校で、形や呼び方が違っても、「職場環境の改善」や「授業力向上」「保護者に理解を求める」ということは、やっておられるはずです。
  フォーラムでは、「愛される学校とは、先生・子ども・保護者が喜ぶ学校だ」という意見が、複数の発表者から出されました。
  5つの提案の着目点は、それぞれ「先生」「子ども」「保護者」と違っていますが、もう少し広い視野で考えると、すべてはその三者に影響を与え合い、「愛される学校」につながっている絵が見えるのです。
  もちろん校長先生方は、そうした「目指す最終形」のビジョンをお持ちのはずです。しかし、それがすべての教職員に、共通認識として伝わっていない学校もあるかと思います。
  全教職員が「愛される学校像」の共有ができるように、管理職の先生方の働きかけが大切ですね。
  「5つ全部盛り」は決して欲張りなことではなく、それが当たり前の学校の姿になることを願っています。

(2015年3月2日)

斎藤さん

●斎藤 早苗
(さいとう・さなえ)

愛知県在住の3人の子供たちの母。 頼まれると断り切れない性分で、幼稚園から中学校まで、何度もPTA活動に参加。
2012年春の玉置崇校長先生の小牧中学校赴任を機に、学校HP内の「PTAの部屋」の自主運営を始め、PTAの各委員会活動をHP上で保護者にお知らせしている。
また、学校HPで発信される情報に対しての「保護者の想い」を発信しながら、学校と先生を応援している。
他校にも「PTAの部屋」が広がって、「愛される学校」が増えるといいなと願っているお母さん。