愛される学校づくり研究会

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★愛される学校づくり研究会では、この1年間「どのようにすれば楽しく授業研究ができるか」を研究していくことになりました。このコラムでは、そこで取り上げられる授業研究の手法や取り組みの様子、そのよさや課題をお伝えしたいと思います。授業研究がテーマですが、「授業で大切なことは何か」「教師が成長するために必要なことは何か」「授業研究が愛される学校づくりとどうかかわるのか」といったことにも触れていきたいと思っています。

【 第2回 】3シーン授業検討法

今回は「3シーン授業検討法」についてお話させていただきます。「3シーン授業検討法」は、以前に先生方とおこなっていた別の研究会で考えられた授業検討の方法です。
 全体で授業検討をおこなうときに、一つの意見に対してなかなか意見がつながらないことがよくあります。一人ひとりが授業を見て気づいたこと感じたことを話しても、特に意識していなかった人は、その場面を思い出せませんので議論に参加できません。多くの人が関心を持った場面でなければ発言がつながらず、議論が深まらないのです。発言者も自分の発言に対して意見が返ってこないので、参加意欲をなくしていきます。そこで、できるだけ多くの人が関心を持った授業場面に焦点化して話し合おうというのが「3シーン授業検討法」なのです。

具体的には、授業の時間帯を表にしたチェックシート、またはメモを手元に用意して授業を参観します。この時、授業の記録をビデオで撮っておきます。参観者は授業を観ていて「いいな!」「おや?」「なぜ?」と感心したり、疑問を持ったりと心が動いたときに、その時間帯をチェックするのです。その細かい内容をメモしていると時間がかかりますので、何時何分とか授業開始後何分と、その場面がいつ起こったかだけを記録しておくのです。いくつチェックしても構いません。心が動いたらその都度チェックするのです。

検討会では、まず時間帯ごとに各自がチェックしたかどうかを挙手で聞き、挙手の多かった時間帯を3つ選びます。こうすることで、議論を参加者の関心の高い場面に焦点化することができます。ここで、撮影しておいたビデオをその時間帯の前後数分間再生します。こうすることで、チェックしなかった人もその場面を思い出すことができ議論に参加できますし、チェックした人も再度確認することで考えを整理できます。ビデオ撮影しても授業検討で活用されているのをほとんど見ません。その理由の一つが目的の場面を見つけるのに時間がかかるということがあります。この方法ですと時間帯がわかっているのですぐにその場面を見つけることができます。ビデオを有効活用する方法でもあるのです。

ビデオ再生の後、参加者にチェックした理由を発言してもらいます。多くの人がチェックしているのですからいろいろな意見が期待できます。挙手に頼らずどんどん指名して進めることもできるので、話し合いが停滞する心配もありません。また、ビデオで再度その場面を見ているので新たな気づきも生まれてきます。実際にやってみると、同じ場面にチェックしていても感じることは人によって異なっていることが分かります。一つの場面をめぐって様々な視点からの意見が交わされることで、議論は深まっていきます。

「3シーン授業検討法」では参加者がどの場面に心を動かすかで話し合う内容が決まってきます。そのため、同じ授業でも参加者によって検討会で話し合われることは大きく異なります。ある理科の実験の授業を対象にベテランと若手で「3シーン授業検討法」をおこなったときのことです。ベテランと若手のチェックした場面が大きく異なったのです。ベテランは授業者が子どもの意見を受け止め、考えを深めるために切り返しているといった子どもとのやり取りの場面に手が挙がります。一方若手は、子どもたちの興味を引くように実験の説明をしているといった、提示の仕方や話術が素晴らしい場面に手が挙がりました。ベテランと若手が授業で意識していることの違いが見て取れました。ベテランは子どもたちの言葉をどう受け止め深めるかが課題となっていますが、若手はそれ以前にどう子どもたちを引き付けるかに苦労していたのです。

「3シーン授業検討法」では、参加者の授業に関する興味関心を焦点化することができますが、参加者の質によっては大切な場面が見落とされる可能性もあります。自分たちが関心を持っていることを話し合えばそれでよい、という考え方もありますが、この点は意識しておきたいことです。司会者やアドバイザーに話し合う場面を一つ指定できる特権を与えるといった方法もあるでしょう。

4月の愛される学校づくり研究会では、この「3シーン授業検討法」を使って授業研究をおこないます。そこでどのようなことが起こり、どのようなことを学んだのかは次回に報告したいと思います。

(2013年4月22日)

大西貞憲

●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「愛される学校づくりフォーラム」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。