愛される学校づくり研究会

学校広報タイトル

★このコラムは、学校のホームページを中心とした学校広報の考え方について、15年以上学校サイトに関する研究を続けてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平氏がわかりやすく解説します。

【 第24回 】子どもブログ活動の導入

私達、国際大学GLOCOMでは2011年から2014年度まで東日本大震災被災地を対象とした学校広報の支援活動を行ってきました。この中で児童・生徒に対する学校子どもブログの導入とサポートは、活動のなかでも大きな位置づけを占めています。各地で先行するブログ活動のノウハウを活かして作った導入方法を簡単にご紹介しましょう。ちなみに45分の授業時間では落ち着いて十分取り組めないので、先にメモ書きを作っておいてもらう事が多いです。

社会的文脈と役割を認識させる

前回も述べた通り、学校子どもブログ活動の核は、社会的なつながりと外部への発信に対する役割・責任を明確に意識付けることにあります。学校ホームページが普段どのように読まれ、信頼されているかを子ども達に想起させ、普段は管理職や教職員が書いているタイムラインに自分の記事も一緒に並ぶのだ、ということを確認します。そのために普段の作文とは違う配慮が必要なことは、たいがい子ども達が先に気付きます。

普通の作文作法とは違うことを知らせる

学級単位の指導でも、児童会・生徒会を対象とした研修でも、「作文が得意な人は?」と尋ねて手を挙げるのはたいがい数人です。特に、男子は苦手意識を持っている子が多いですね。「大丈夫!僕も毎日論文書いているけれど、作文は大嫌いだったからね」とその場を和ませてから「今日は作文の作法は忘れていい」と言います。

作文にはいろいろと面倒な作法がありますが、(漢字の間違いとか送り仮名とか)あまりにも些末な約束事に囚われ過ぎると、文章の組み立て自体が出来ずに敗北感ばかりを与えてしまうことになります。ブログ記事の場合は文章構成を第一に考え、骨組みを先に作ってしまいます。

記事に必要なのは客観的事実の記述。事実を記述するためには5W1H(いつ・どこで・だれが・何を・どのように・なぜ)が必要な事を述べます。ここまではいたって普通。ただし、小学生に6つを全て書かせるのは無理ですから、いつ・どこで・だれが・何をしたか4つキーワードが出来たら、相談に来るように促します。この時点はまだ文章にする必要はない事を強調しておきます。

メモ書きをふくらませる

子どもが書いてくるキーワードは合計してもせいぜい数十字です。字数が足らない事は書いている本人が一番良く分かっているので、相談しに来る表情はとても不安そうです。

この時、私は記事の出来事を何も知らないので、メモ書きのエピソードを膨らませる質問を繰り返します。例えば遠足のエピソードなら、目的地に向かうまでにどのくらい時間がかかったのか、途中で何か見つけたモノはなかったか、目的地はどんなところにあったのか、友達がどんな感想を漏らしていたか、などなど。

こうした素朴な質問をすると懸命に言葉を探して教えてくれるので、すかさず「メモとりなよ」とキーワードを全て書き取らせます。何度か繰り返してメモ書きが増えたら「これだけメモがあれば余裕で200字書けるから、あとは起こった順に並べ替えて文章にしてごらん」とワープロでの文章構成を促します。だいたいはこのやり方で文章を完成まで導く事が出来ます。

写真を選ぶ

子ども達の様子を見ていると、写真を眺めながら思い出す事も多いので、行事関連の記事の場合は、最初に写真を選ぶ事から始めることもあります。本人が撮影した写真が一番良いのですが、小学校の場合は先生が用意されるケースの方が多いですね。

選び方としては、写真だけを見て説明できる要素は何か、言葉で補えるか、あるいは、余計な要素が入りすぎていないか、がポイントです。実際には、撮影するときに気を遣って多めにシャッターを切っておかないと、何気ないスナップでは使い物にならないこともあります。

情緒的表現や感想を求めない

この点は実践者によって見解の相違があるところですが、私のブログ記事指導では、書いた本人の気持ちや感想をことさら求めることはしません。記事はあくまで客観事実の記述が目的であって、筆者の感情を吐露する手段ではないからです。

作文指導ではわりと無造作に指導されることも多いのですが、個人の感想や気持ちを他者に顕わにする事は本人のデリケートな部分に触れる行為ですし、性格的に向かない人もいる事は理解しておくべきでしょう。

「何かありがたがらなければいけない」とか、「感動しなければいけない」のに、自分は何の感想も持てない事に悩んで萎縮してしまう子どももいますし、無理に感想や気持ちを求め過ぎれば、型通りのつまらない表現になるか、大人の顔色を窺ったようなわざとらしい話になってしまいます。もし、子どもの側に強い感情の動きがあれば、それは文章中にも自然な表現として表れてくるものです。

ワープロに頼れる部分は頼ってもよい

作文では、漢字書き取りや丁寧な書き方にまで指導が及ぶ事もあります。書き文字が雑で苦手意識を持っている子はそれだけで書くことが鬱になってしまいます。

ブログ記事作成指導は通常の作文指導とは違うので、メモ書きには正確な文章構成は求めませんし、実際の文章構成作業はワープロを用いて行ってもらう事がほとんどです。

ワープロの良いところは、カット&ペーストを使えば文章構成を自在に変更可能なこと、表現上のおかしな部分を逐次チェック出来るようなアシスト機能を持っていること、手書き文字のような誤字トラブルが起きないことで、これらを上手に使えば子どもの負担はだいぶ軽くなります。

文章量=記述力が向上すること

私は作文の専門家ではないので、突き詰めて研究したわけではありませんが、ブログ記事指導技法は、子ども達の作文苦手意識のいくつかの原因を解消しうると考えています。

子ども達の文章量が増えないのは、文章構成や検討に十分時間がかけられない事が最大の課題なので、余計な要素を全部削ぎ落とし、ワープロの助けも借りながら、まずは構成骨組みを作ることに集中するというやり方を採用している訳ですね。もちろん、指導者のアシストや丁寧な添削なしには成立しないので、活動への指導時間がやや重荷になってしまうかもしれません。

文章量の向上は経験頻度や回数に大きく影響されるので、一概には言えませんが、当初は50字がやっとという子も、半年、一年と経験するうちに200字・400字越えを達成するケースもありますし、毎回のように800字超の子ども記事を掲載するヘビーな学校もあるので、相互に他校のブログを勉強してみるのも良いでしょう。

(2015年4月27日)

豊福先生

●豊福 晋平
(とよふく・しんぺい)

国際大学GLOCOM主任研究員・准教授。専門は教育工学・学校教育心理学・学校経営。近年は教育情報化 (学校広報・学校運営支援)、情報社会のデジタルネイティブ・リテラシーに関わる研究に従事。1995年より教育情報サイトi-learn.jpを運用、2003年より全日本小学校ホームページ大賞 (J-KIDS 大賞) の企画および実行委員。