愛される学校づくり研究会

学校広報タイトル

★このコラムは、学校のホームページを中心とした学校広報の考え方について、15年以上学校サイトに関する研究を続けてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平氏がわかりやすく解説します。

【 第23回 】子どものブログ活動を組織する

学校子どもブログは実にユニークかつ強力な枠組みを持っています。実践校の長年の取り組みから、子ども達を上手に誘導し、高い動機付けを保ったまま活動を持続させるノウハウがあちこちに埋め込まれているのです。今回は、特別活動の一環としてブログを定着させるためのコツをいくつかまとめてみました。

学校が社会的文脈を用意する

実は、学校ホームページ(ブログ)に子ども達が記事投稿するスタイルは「学校子どもブログ」が最初ではありません。過去には、特定単元で遠隔地の学校とメッセージを交換したり、ウェブ学級日誌と称して毎日のクラスの様子を投稿したりするサービスなど、様々な試みが行われてきました。しかし、これら多くの試みの欠点は、最初に児童生徒が参照すべきモデルが周囲にないうえに、メッセージや記事を投稿する児童生徒の意識が、授業交流相手や学級内部といった内向きに留まりやすいことでした。

たとえば、特定単元授業でいきなりブログ投稿の手順について指導を受けても、子ども達にはあらかじめお手本となるモデルが与えられていないので、どんな題材を選んで、何をしたら良いか、見通しを立てることが難しいのです。また、授業交流相手も学級のメンバーも同じ経験を共有しているので、あえて文字で詳細を伝えようとする積極的動機付けにはつながりにくく、その場に居合わせなかった者が読んでも、十分に意味の取れない文章になってしまいがちです(遠足の作文が良い例です)。

これに対し、「学校子どもブログ」は基本的に学校広報の枠組みに乗っている活動なので、手本は学校の先生方の記事を参考にすれば良いし、普段から保護者が学校ブログを読む状況になっていれば、その影響力や信頼度についても家庭で自然に学んでもらえます。学校ブログは、いわゆる子ども騙しのイミテーションではなく、社会につながっている本物のメディアなので、その前提を理解している子どもほど、活動に関わる動機付けとわくわく感は高まり、学校の事をよく知らない人々に対する説明をどう尽くしたら良いか、という工夫や思考につながります。

仕事としての責任感と緊張感

私は学校訪問の「学校子どもブログ」導入篇で必ず「キミが書く記事は校長先生の記事の隣に表示されるかもしれない」と話しますが、途端に教室の空気が変わるものです。ブログ記事投稿の活動は仲間内の「お遊び」ではなく、学校の公式広報の一部を「仕事」として分担してもらう事を強調します。その子にとって実際それらが可能かどうかは別として、仕事に求められる品質や責任を全うすることを子ども達は感じ取ります。

多くの児童生徒にとって、理路整然と数百字の文章を組み立てるのは簡単な事ではありませんが、期待された仕事に対する責任感や緊張感が、子ども達の能力を飛躍的に引き上げてくれるのです。

格好良さがあこがれをつくる

小学校に限った話かもしれませんが、多くの実践校では「学校子どもブログ」に関わる子ども達は下級生や同級生からも一目置かれる、憧れの存在です。学校行事や集会などの場面で「PRESS」腕章をした子ども達が写真撮影したり、堂々と大人相手に取材インタビューしたり、という恰好良いシーンに何度となく遭遇すると、そうした特別な活動に関わってみたいという強い動機付けにつながります。

当然、見かけだけで活動は成立しませんが、見た目や形から活動に関わろうと考えるのはけっして悪いことではありません。ちなみに、私達が学校訪問で「学校ブログ活動」に関わる時は、学校向けに取材用腕章を、子ども達向けには取材手帳をプレゼントすることにしています。

委員会の活動スタイルが持続性を強化する

「学校子どもブログ」活動は、見た目の派手さ以上に記事投稿に至るまでの様々なトレーニングが欠かせません。特に、文章構成については一部の得意な子を除くと、わずか数十字がやっとの作文能力を数百字レベルにまで引き上げるための添削指導からは絶対に逃れられません。

ただし、委員会の活動スタイルとして経験者が初心者を指導するスタイルが出来上がってしまえば、指導する先生が直接絡まなくても、取材作法や記事パターンについての知恵は、子ども達の間で比較的円滑に継承されます。学校ブログには過去の活動で投稿された記事が多数載っていますから、初心者の子ども達にとっては、これらを簡単にレビューするだけでもよい勉強になるでしょう。

委員会・クラブの活動は指導者に負うところが大変大きいので、熱心な先生が異動されると後が続かなくなる懸念が常に生じるのですが、過去の事例を見る限り、活動パターンがきちんと組まれている場合、指導される先生が交代しても活動は維持されることが多いようです。

他校とのゆるいつながりを保つ

「学校子どもブログ」活動を行っている実践校は他校の委員会やクラブと交流を行っているケースが少なくありません。これらの交流が一般的な学校間交流授業と違うのは、事前の根回しや特定日時を設定した同時交流といった双方の学校負担を出来るだけかけないことです。学校によって委員会やクラブ活動に充てられる日程は異なりますし、やり方も人数も違うことが多いので、無理矢理交流を同期させると疲れてしまって長続きしません。

これまでの実践校間の交流は、ブログのコメント欄に記事に関する感想をお互いに書き合ったり、コメント欄が使えない場合はメールで送ったり、といった活動を主に行われてきました。当然ながら、全ての記事に対してコメントすることは不可能ですし、いつ相手から反応が来るか、事前にはまったく予測出来ません。いわば、ゆるくつながった関係を出来るだけ長続きさせることがコツと言えます。

一般に、学校外から反応が返ってくることへの子ども達の意識やこだわりはとても大きいので、相互に数校ずつ交流先の学校を維持しておくと良いでしょう。

(2015年3月30日)

豊福先生

●豊福 晋平
(とよふく・しんぺい)

国際大学GLOCOM主任研究員・准教授。専門は教育工学・学校教育心理学・学校経営。近年は教育情報化 (学校広報・学校運営支援)、情報社会のデジタルネイティブ・リテラシーに関わる研究に従事。1995年より教育情報サイトi-learn.jpを運用、2003年より全日本小学校ホームページ大賞 (J-KIDS 大賞) の企画および実行委員。