愛される学校づくり研究会

学校広報タイトル

★このコラムは、学校のホームページを中心とした学校広報の考え方について、15年以上学校サイトに関する研究を続けてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平氏がわかりやすく解説します。

【 第22回 】学校子どもブログとは

学校公式ブログに記事を投稿するのはもっぱら管理職や先生方という学校が大多数ですが、最近は、児童生徒が記事を投稿する活動が小中学校を中心に広まっています。子どもたちによる記事は保護者の関心を集めるだけでなく、書き手の児童生徒の大きな教育的効果も期待出来る画期的な取り組みといえるでしょう。

学校子どもブログの定義と条件

学校子どもブログ活動をひとことで説明すると、児童生徒が特別活動等の時間を使い、継続的にブログ記事投稿を行うもので、発展的に投稿記事へのコメントを通じた学校間交流も含まれます。もう少し正確に定義すると、学校子どもブログ活動には次の4つの条件があります。すなわち、

  1. 児童生徒による投稿編集が、学校の特別活動(クラブ活動や児童会生徒会)の正統な活動として認知されていること
  2. 児童生徒が作成するブログ記事が、学校の公式な広報活動の一部を担っていること
  3. 児童生徒の作成したブログ記事はパスワード等の閲覧制限がなく、広く一般に公開されていること
  4. 通年で継続的に運用されていること

たとえば、特定単元やトピックを扱ったプロジェクトなどで短期集中型のブログ投稿を行ったり、電子掲示板やSNS(Social Networking Service)を使って双方向のやりとりを前提とする交流学習を行ったり、というケースはこの条件には含まれません。

また、学校広報本体の活動(つまり教職員からの投稿)が十分でない場合は、学校子どもブログ活動が突出してしまうので、これも条件からは外れることになります。連載14回目で述べた学校ウェブサイトの成長段階に当てはめてみると、第2段階目以上にあたり、日常的な広報と保護者や地域との信頼形成がある程度整った状況にあれば可能でしょう。
  なぜ、この4条件が設定されているのかについては後ほど解説します。

きっかけはJ-KIDS受賞校の活動から

学校ホームページに子どもの作品を掲載する事例は、学校ホームページの創成期から見られたのですが、持続的な児童生徒の活動として本格的に位置付けられたのは2004年のことでした。

第1回全日本小学校ホームページ大賞(J-KIDS大賞2003)を受賞した千葉県大森町立大森小学校(当時)が児童の情報委員会を組織し,児童が記事掲載する「こども日記」「おいしい給食」を開始しました。当時はまだブログが一般的ではなかったので、ホームページ・ビルダーを用いて1ページずつ作成されたのですが、授業のある日はほぼ毎日記事が掲載されるという活動は、他のJ-KIDS受賞校からも大いに注目されました。

2005年度には,愛知県一宮市立瀬部小学校がパソコン委員会,神奈川県横浜市立千秀小学校が千秀発信隊を組織し,定期的な記事掲載を開始しました.2006 年度になると,一宮市立瀬部小学校,横浜市立千秀小学校,北海道斜里町立峰浜小学校,東京都江東区立辰巳小学校の4校間を中心とする交流が始まりました.4校中3校が同じ商用ブログを用いていたので、ホームページ上で簡単にコメントを送り合うことが出来るようになったのです。その後、学校子どもブログ活動に参加する小学校は十数校に広がり、自校での記事掲載と交流校との記事コメント交換を行うスタイルは全国規模になりました。

学校子どもブログが定着した理由

J-KIDS大賞では多様な立場からの情報発信を推奨しているので、レベルの高い学校が取り組むきっかけを作ったかもしれませんが、実践側にとってみれば、賞を取るためというよりは、むしろ、直接的積極的な動機付けと成果の方が大きかったように思われます。
 一般論にするほど広まっていないので、あまり大げさには書けませんが、学校子どもブログ活動を行っている学校では、比較的取り組みが長続きしやすいというのも特徴の一つです。学校が活動に取り組む理由について考えてみると、次の3点があげられます。

読み手が楽しい
  学校子どもブログの第一の読み手は何といってもまず保護者ですが、子ども達を応援するという純粋な動機付けに加え、教職員の記事とは違った視点が得られる面白さに気付かれるはずです。
  子ども達が一所懸命に書き上げた文章は、拙い表現のなかにもたまに驚かされるような発見があるものです。書き手の子ども達の記事作成能力も徐々に成長しますから、半年・一年と関わりを続けるうちに、記事記録の蓄積から成長変化の軌跡を知ることが出来るでしょう。
  学校によっては、子ども達の記事に対するコメントを受け付けているケースもあります。教職員の記事に対するコメントはなかなか付けにくいものですが、子ども達に対するコメント・アドバイスを毎回楽しみにしておられる方もいらっしゃいます。

書き手が成長する
 学校公式ブログへの投稿は、子ども達にとってみればそれなりに使命と責任を帯びる行為なので(逆に、指導上はそうした意識付けが必須なのですが)、国語の授業や宿題で書かされる作文とは違った意識が働きます。
  学校子どもブログは児童会・生徒会の委員会やクラブを中心に行われていますが、半期または通年の活動期間中には何度も当番が回ってきますから、そのたび書くためのスキルが磨かれることになります。実際、記事投稿には相応の能力が要求されますが、過去の実践例では、これらの意識や執筆機会を得ることで、子ども達の作文スキルは著しく成長することが示されています。活動は貴重な学びの場でもある訳です。

学校側にも大きなメリットがある
 学校子どもブログを委員会やクラブ活動として組織・運用するためは、特に初期には情熱と体力が必要です。指導者側にはおろそかにできない添削と記事承認の手続きが常に伴うので、余裕がないと厳しいかもしれません。
  しかし、先に述べたような子ども達の学びの機会を提供する以上に、学校側にはいくつかメリットがあります。
  先にも述べましたが、まず大きなポイントは、何と言っても教職員からの情報提供に加えて、児童生徒からのチャネルが増えることです。大きな学校行事のレポートや、授業の感想など、教職員側の記事と合わせて読む事で、学校での出来事を立体的に伝える事が出来ます。
  学校子どもブログ活動によって、児童生徒からの投稿が増えれば、一日あたりの投稿記事数が増え、更新頻度が高くなります。特に、活動の一部をルーチン化すれば(たとえば、給食レポートや気象データのレポートなど)、子ども達はきちんと仕事をこなすので、毎日途切れずに記事投稿を得ることが出来るでしょう。
  一部の学校が行っている記事に対するコメント受付では、かつて活動に関わった卒業生や保護者、あるいは、教職員が書き込みをしてくれるケースが多いので、記事一覧を眺めているだけでも、学校の活動が様々な人に支えられていることが分かるでしょう。

(2015年2月2日)

豊福先生

●豊福 晋平
(とよふく・しんぺい)

国際大学GLOCOM主任研究員・准教授。専門は教育工学・学校教育心理学・学校経営。近年は教育情報化 (学校広報・学校運営支援)、情報社会のデジタルネイティブ・リテラシーに関わる研究に従事。1995年より教育情報サイトi-learn.jpを運用、2003年より全日本小学校ホームページ大賞 (J-KIDS 大賞) の企画および実行委員。