愛される学校づくり研究会

学校広報タイトル

★このコラムは、学校のホームページを中心とした学校広報の考え方について、15年以上学校サイトに関する研究を続けてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平氏がわかりやすく解説します。

【 第21回 】学校サイトの長期的な運用を考える

日本で学校ホームページが最初に開設されたのは1994年の事ですから、実に20年以上が経過している訳です。ホームページも日進月歩で進化しているので、20年前の姿をそのまま保っているところはまずないでしょう。まあ、見た目が新しくなることは悪い事ではないのですが、リニューアルのタイミングで、いつの間にか過去の記録が棄てられてしまうのでは、少々もったいない気がします。第13回では、学校ホームページの1機能として資料庫・博物館を紹介しましたが、過去の資産を失わず活かす上手い方法はないものでしょうか。

速報性・新しい情報ばかりがホームページの役割ではない

学校ホームページの大半のユーザーは学校のいまを知りたくてアクセスしますが、何も新しい情報をタイムリーに届けるだけが学校ホームページの役割ではありません。

かつては、価値ある古いモノを後世に残すために、博物館や美術館などの立派な施設に広大な格納庫や空調の整った閲覧室を設けてきたわけですが、デジタルの情報であれば、そんな贅沢な投資をしなくても、ホームページにしておくだけで、いつでも閲覧可能な環境を提供出来ます。

実物の博物館・美術館はある程度の規模の自治体でなければ運営出来ませんが、デジタルならほとんどコストがかからないので、学校を地域の身近な情報を蓄積・継承するための拠点として活かすことが出来ます。

もし、昔の名残で、未だに学校ホームページ容量が厳しく制限されていて、泣く泣くデータを削るような事をしているなら、教育委員会の担当者に古いデータを蓄積しておく意義は強調して伝えておきたいものです。

デジタルの情報は簡単に失われてしまう

ホームページの運用担当者が心しておかねばならないのは、図書館の膨大な紙書籍と違って、デジタル情報は実体が伴わないので、いとも簡単に消去可能だということです。

特に、CMS(Content Management System)を用いない場合、通常ホームページサイトの構成やリンクの地図は運用担当者の頭の中にしかありませんので、情報量が多くなるほどサイトのディレクトリ構造は複雑になり、他人には理解しがたくなります。熱心な運用担当者から引き継いだ後任者は、絡まった構造を目の前にして茫然とするのはまず間違いありません。

後任者がそこで「ええい面倒だ」と一発デリートキーで消してしまうか、それとも思いとどまって、上手く折り合いをつけて運用したいと考えるかが最初の関門になります。おそらく、トップページから迷わず昔のページがたどれるようになっていれば、消去される危険は半分以下になるでしょう。逆に、階層が深すぎてリンクがたどりにくいとか、一度リンクが切れたりしてページが迷子になったりすると、そのまま放置されるか、ゴミ箱行きになる可能性が高くなります。

消して良い情報など基本的にない

ホームページに掲載した情報は、その学校が歩んできた軌跡ですから、学校ブログの記事はもちろん、他にも、公的な統計情報や文書、あるいは、受賞歴など、後から振り返りに役立つ情報は出来るだけマメに残しておきたいものです。

ホームページは最新情報の需要が圧倒的に高いので、児童生徒数や教員数など、毎年書き換えてしまう情報があるでしょう。要覧や年間行事表のようなPDFで提供するような情報も、基本的には上書きしているケースの方が多いと思います。しかし、史料的な価値を考えると、これらを毎年上書きで書き換えてしまうのは問題です。たとえば、児童生徒数の場合なら、過去に遡ってグラフにしたいというニーズがあり得るので、毎年上書きではなく、沿革のように追記型デザインにするのが望ましいと言えます。

一度設定したディレクトリ構造やファイル位置は変えてはいけない

もし、後任者が極度のきれい好きで、ディレクトリの中にある訳の分からないファイルを引っ越し整理しようなどと考え出すと、余計に面倒な事が起こります。例えば、特定のディレクトリを新たに作って古いファイルを放り込むと、検索エンジンなど、サイト外部から貼られたリンクは全部切れてしまいますし、サイト内部のリンクも確認・修正が必要になります。そんなのは徒労以外の何物でもありません。

つまり、どんなに意味不明なファイル構成になっていても、一度設定されたディレクトリやファイルの位置は原則変えてはいけない、ということです。新しい秩序が必要な時は、原則、古い構造はそのまま残して、別の構造を作れば一番手間がかかりません。まあ、最初から分かりやすいディレクトリ構造やファイル名の命名方法を心がけていれば、後の運用担当者の負担は随分と違うのですが、なかなか難しいものです。

昔の情報をどう見せるか

学校は基本的に単年度で運営されているので、ホームページも年度はじめに教職員異動や児童生徒進級に伴う大幅な情報変更が必要になりますが、それ以降は、行事も活動も毎年ほぼ同じというパターンが多いのではないでしょうか。

年度で情報をまとめてしまうというアイデアは悪くありませんし、学校ブログ製品では前年度の記事をフィルタして見せない状態を基本にしているケースもあります。ただし、年度運用を基本にすると、前年度とのつながりが疎になってしまうので、複数年をまたいだ活動(部活動など)についてはかえって見せ方が難しくなります。

在校生・卒業生やその保護者の立場からすれば、特定入学年の世代が3年間ないし6年間を過ごすという見え方が欲しいところです。学校ブログの記事では、それぞれの記事に添付するタグを「1年生」「2年生」とするよりは、「2014年度入学」「2013年度入学」あるいは高校などのように「第XX期」としておいた方が、あとから検索しやすくなります。

外部サービスの併用は提供終了に注意

学校の公式ページから外部のブログやカウンターサービス等にリンクして、あちこち間借りするような形で運用している学校ホームページもありますが、特に無料民間サービスは突然提供終了されるケースがあります。ブログのようにデータ量が多い場合、データ消滅してしまうと打撃が大きいので、記事データをダウンロードしておく事も必要でしょう。

(2015年1月26日)

豊福先生

●豊福 晋平
(とよふく・しんぺい)

国際大学GLOCOM主任研究員・准教授。専門は教育工学・学校教育心理学・学校経営。近年は教育情報化 (学校広報・学校運営支援)、情報社会のデジタルネイティブ・リテラシーに関わる研究に従事。1995年より教育情報サイトi-learn.jpを運用、2003年より全日本小学校ホームページ大賞 (J-KIDS 大賞) の企画および実行委員。