愛される学校づくり研究会

学校広報タイトル

★このコラムは、学校のホームページを中心とした学校広報の考え方について、15年以上学校サイトに関する研究を続けてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平氏がわかりやすく解説します。

【 第14回 】学校広報と学校ホームページの成長段階 その1

副題のとおり「地味でベタな日常」を標榜する学校広報ですが、ベタな日常の積み重ねの先には次の成長ステップが見えてきます。今回は学校広報のステップとそれに伴う学校ホームページの成長段階についてまとめてみました。

第1段階「宣伝」:広報は宣伝だと誤解している人はやっぱり多い

第1回目にも述べているように、日本国内で広報(PR : public relations)は宣伝(promotion)とほぼ同義として理解される事が多いのですが、定義をもう一度持ち出せば、「広報とは、組織と公(おおやけ)との関係づくり」ですから、宣伝はその一部にしか過ぎないのです。
  一般的な宣伝の意味は「企業や商店などが自分達の提供する商品やサービスを、その特長も含めて一般大衆に知ってもらおうとする活動」(Wikipedia)なので、児童生徒募集のない一般的な学校にとっては、縁遠いもの、意味のないものと片付けられる傾向が強いうえに、コストをかけてよく見せようとすること(デコレーション)に対し、職業上の倫理に照らして嫌悪を顕わにする方もいるでしょう。
  児童生徒募集をする学校も含めて、学校の宣伝行為は決して褒められたものではありません。もちろん、広告代理店に多額の費用を支払って、入試広報を依頼する私立学校も存在しますが、コストをかけたデコレーション(パンフレットやウェブサイト)は往々にして限定された対象と期間にしか作用しないものです。たとえば、児童生徒募集期間が終わって学校に入学してみたら、宣伝内容と実態との間にギャップがあり過ぎた、とか、外部業者に宣伝を依頼している期間が終わった途端に学校から何も情報が発信されなくなった、とか、そのようなギャップが深刻になるほど、結局は学校に対する信頼や社会的評価を下げてしまいます。学校は関係者と長期間の関係を形成する以上、一時的宣伝で売り逃げ的な発想は通じないものと考えておくべきです。

学校要覧情報が揃った学校ホームページ

しかしながら、次の広報段階は日常的な負荷が発生するので、マンパワー不足で次に進めない学校が多数あることも事実です。そこで、比較的更新回数が限られる第1段階の学校ホームページに求められる条件について述べておきましょう。条件とは、毎年度改訂される学校要覧の情報がタイムリーにきちんとホームページにも反映されていることです。
  学校を訪れた事のない人が検索エンジン等を使って先に学校ホームページの情報を予習しておくのはもはや当たり前ですから、期限切れの情報を放置していると社会的な信用に関わります。特に管理職の異動があった年度は要注意です。
  宣伝段階とはいえ、学校要覧は凝った内容やレイアウトである必要はありませんが、紙に打ち出した学校概要をスキャンして画像情報として掲載するよりは、文字情報としてページ掲載することが望ましいでしょう(画像情報のままではGoogleなどの検索エンジンを用いて学校情報を検索することが著しく困難になってしまいます)。

第2段階「信頼」:学校広報の出発点

学校が最初に目標とするステップがこの信頼形成段階です。学校が関係者や地域社会から理解されると共に、相互の信頼関係を結ぶことが目標となります。
  学校は社会的にバッシングや不信の対象になりやすく、そのことに理不尽を感じている学校関係者も多いでしょう。しかしながら、学校側が積極的な情報開示姿勢を持って活動すれば、日々の活動を正当に理解・評価してくれる人々を味方に付ける事が出来ます。
  信頼形成段階で一番重要なのは、関係者の潜在的なニーズに対して当事者として持続的に応えるということです。宣伝のようにコストをかけてデコレーションを依頼する必要はありませんが、関係者の欲する情報は素朴な今日の学校の出来事そのものですから、他人任せには出来ません。
 たとえば、通常は入試広報の対象になる入学志望者や保護者(潜在的関係者)に対しても「地味でベタな学校日常」の情報発信は有効です。彼らが必要としているのは、これから長い付き合いになるかもしれない学校の素顔なので、その場に自分が身を置いた時の事を出来るだけ正確に想像出来るような、閲覧者に寄り添った身近な情報であるほど、理解・納得度は高まるでしょう。
  また「地味でベタな学校日常」の高頻度な発信は、結果として相互の信頼関係のみならず、蓄積された膨大な記事情報と信頼関係を媒介とした次のステップの基礎作りにもつながります。

繰り返し見ることが楽しみなホームページ

信頼形成段階の学校ホームページに必要な条件とは、言うまでもなく高頻度な更新ですが、閲覧者目線から考えると、さらに毎日繰り返し見ることが楽しみになるような工夫が必要です。たとえば、(信じられないことですが)学校や行政向けCMS製品のなかには、トップページに新着情報を表示しない仕様になっているものがあります。これではいくら学校側が熱心に記事更新しても、なかなか注目してもらえません。トップページには出来るだけ最新の学校活動が一目で分かるような写真と新着情報を表示するレイアウトを使いましょう。
  また、毎日更新を行っている学校では、ブログ記事が更新されるとtwitterやFacebookにも更新情報を反映しているケースがあります。最近はSNS(Social Networking service)が普及していますから、学校名義のtwitter IDやFacebookページを設けて、学校ホームページの更新情報を伝えるのは良いアイデアです。更新情報を反映させる方法は機械的なものもありますが、それぞれのSNS向けに解説やキャッチタイトルを付けると、関係者から「いいね!」やコメントをいただくきっかけにもなるでしょう。
(次回に続きます)

(2014年11月4日)

豊福先生

●豊福 晋平
(とよふく・しんぺい)

国際大学GLOCOM主任研究員・准教授。専門は教育工学・学校教育心理学・学校経営。近年は教育情報化 (学校広報・学校運営支援)、情報社会のデジタルネイティブ・リテラシーに関わる研究に従事。1995年より教育情報サイトi-learn.jpを運用、2003年より全日本小学校ホームページ大賞 (J-KIDS 大賞) の企画および実行委員。