愛される学校づくり研究会

学校広報タイトル

★このコラムは、学校のホームページを中心とした学校広報の考え方について、15年以上学校サイトに関する研究を続けてきた国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の豊福晋平氏がわかりやすく解説します。

【 第13回 】学校ホームページの機能

最近の学校ホームページは最初からブログレイアウトになっているサイトが多いので、見た目に合わせてブログのような記事を書くものだ、と何となく考えておられる方もおられるのではないでしょうか。訪れる人に応じて情報ニーズは異なるもの。学校ホームページにどのような機能を持たせたら良いのか、3つのバリエーションについて解説します。

新聞としてのホームページ

一般的なブログでは、新着記事がトップページの目立つ位置に表示されます。これはウェブサイトの一番大きな価値が速報性にあることを端的に表している訳です。
  学校ホームページを最も頻繁に閲覧するのは保護者です。保護者の一番大きなニーズは、我が子が学校で今日一日をどのように過ごしてきたか知ることにありますから、出来るだけタイムリーに、かつ、保護者にとって身近な情報が届けられることが大切です。
 面白い事に、学校に関わりのない一般の人にはあまり意味のない情報でも保護者にとっては重要なことがあります(たとえば、今日の給食献立の情報は夕食メニューを考える者にとってとても大切な情報ですね)。
 学校広報の基本は「地味でベタな学校日常」の発信である、と繰り返し述べている通り、印刷物のようにまとまった・整理された内容にするために編集に時間をかけるよりは、断片的でも多様な情報を届けた方が保護者ニーズに叶うと言えます。学校ブログはそのような用途に最適でしょう。長い文章を書くのが億劫なら、様子を良く捉える写真に一言二言説明が添えられているだけでも十分です。
 ちなみに、新聞としての学校ブログ記事はたいてい一度公開されると、書きっぱなしで忘れられる事が多いのですが、後述する「資料庫」としてのホームページでは、振り返りのための貴重な蓄積記録としての価値を持ちます。

資料庫・博物館としてのホームページ

学校ホームページの閲覧者のなかには、特定の目的があってまとまった情報を得るためにアクセスする人がいます。たとえば、学校概要が知りたいとか、教育活動やPTA活動にはどういった特徴があるのか、とかいうものです。
 資料庫としてのホームページは、そういった目的を叶えるものですが、具体的なコンテンツの登録方法としては次の3通りがあります。

・まとまった文書を登録する方法

学校では学校概要・教育計画・各種報告書等の定型文書を作成するのが普通ですから、これらをPDF化してホームページに登録しておけば、閲覧者は必要な情報にアクセスしやすくなります。
  配布文書機能の付いているCMSならは、単にファイルを登録しておけば良いのですが、一般的なブログシステムの場合は、登録方法に一工夫必要です。具体的には「学校概要」などのカテゴリを設けて、1文書につき1記事で登録しておきます。必要に応じて、年度や文書種類に関するキーワードを加えるなどして、検索しやすくしておきましょう。

・ブログ記事のログ化

ブログ記事が毎日のように投稿されていれば、過去に学校でどのような出来事があったのか、振り返るための資料になります。
 たとえば、昨年度の中体連で対戦勝敗はどうであったか、修学旅行ではどんな活動をしたのかなどは、しばしば調べ物のネタになりますが、わざわざ紙資料をひっくり返さなくても記事検索一発でブログ記事に到達できる訳です(もちろん記事内容にそういった事柄をきちんと記録しておくことが重要なのですが)。

・作品等のアーカイヴ化

作文、図画工作、栽培、調理実習など、子どもの個々の作品には、新聞的記事として取り上げるほどの積極的価値がなくても、後に資料的価値を持つものがあります。特に、実物の図画工作や書道作品などは、現物が学校側に残らない事が多いので、デジタル化された映像情報を保持しておく積極的な理由があります。
 CMSやブログシステムによっては、デジカメ写真の保存やサムネイル機能を持っているものがありますから、こういった仕掛けとともに活動単位やテーマをキーワードとして登録しておけば良いでしょう。

単年度に留まらない学校の歩みと成果蓄積を見せる

学校業務は年度で動いていますから、年度が切り替わると過去の事には次第に疎くなってしまうものです。過去年度の情報をあっさり消し去ってしまう学校ホームページもありますが、それではあまりに素っ気ないというもの。
 保護者や児童・生徒は入学してから卒業まで長い時間をそこで過ごす訳ですから、少なくとも、彼らの時間的な感覚に応じた内容蓄積と、ふりかえりの見せ方には工夫があって然るべきでしょう。例えば、今の6年生が1年生であった時にどんな事が起こったのか、何を作品として作ったのか、ひとつページを設けてまとめている素敵な事例もあります。

人と人をつなぐホームページ

学校側が意外に見落としやすいのが、地域社会において相互に人をつなぐ機能です。学校ホームページは、そのメディア特性上、学校側から閲覧者(多くは保護者ですが)への単純一方通行になりやすく、受け手を情報の消費者にしてしまいます。
 しかし、閲覧者の側からみれば、とある学校に興味関心を持ってアクセスした共通点を持っているわけで、たとえば、学校と保護者、学校と地域住民といったフォーマルな関係以外でも、何かきっかけがあれば、保護者同士で集ってみたり、保護者でなくても学校を訪問してみたり、地域の催しに参加してみたり、といった関係を相互に深めていくことが出来ます。
 何かイベントを開催して集まってもらう、そのためにホームページで告知をする、という使い方以外でも、例えば、教育活動や学校行事に参加する地域の方々を紹介するとか、地域のお祭りと学校との関わりを少し詳しく伝えてみるとか、そういった小さなきっかけを沢山作ることで、種まきが出来るでしょう。

(2014年10月20日)

豊福先生

●豊福 晋平
(とよふく・しんぺい)

国際大学GLOCOM主任研究員・准教授。専門は教育工学・学校教育心理学・学校経営。近年は教育情報化 (学校広報・学校運営支援)、情報社会のデジタルネイティブ・リテラシーに関わる研究に従事。1995年より教育情報サイトi-learn.jpを運用、2003年より全日本小学校ホームページ大賞 (J-KIDS 大賞) の企画および実行委員。