愛される学校づくり研究会

★新教育コラム「出会いこそが教師をつくる」開始にあたって

 だれしも、教師人生に変化をもたらした、心に残る出会い(人、物、出来事など)があるといいます。このコラムでは、その出会いについてリレー方式で語っていただきます。

【第7回】子どもの数だけ夢がある
〜扶桑町立扶桑中学校 瀬上圭太〜

「子どもの数だけ夢がある」
 この言葉は、当時小学6年生の息子の勧めで見たドラマ「ルーキーズ」での教師の語りの一部です。普段、ドラマを見ることがない私であり、喫煙や暴力といった場面は批判的ですが、子どもを信じ、子どもの成長を喜ぶ教師の姿、それをみて変わる子どもたちに、私自身もこのドラマに対する思いが変わっていったことを覚えています。

学校にはさまざまな子どもがいます。ちょうどそのころ、体を動かすことは好きだけど勉強は苦手という子どもが何人かいました。その子どもたちは仲が良く、同じ部活であり、その部活の顧問は私でした。学校生活では同僚の先生から相談されることがあり、時には外部の方にも迷惑をかけた子どもたちでした。その都度、指導してきました。しかし、部活をしている時は違いました。表情や動きがとてもよく、この姿をみていると私がエネルギーをもらうことがありました。

私が顧問として指導していたことは、(1)最終ゴールを常にイメージする。(2)見通しを持たせ、今は何をするとよいかチームとしての共通のイメージを持たせる。(3)とにかく毎日練習し、練習試合を多く組み、経験を積ませることでした。

いよいよ最後の大会を迎えました。ここでTVドラマならば逆転勝ちとなるところですが、最後のところで力及ばず、上の大会に出場する夢が断たれました。泣き崩れる子どもたちの姿は今でも覚えています。そんな彼らも、残念ながら卒業まで多くの方に迷惑をかけてしまいました。その時は、学校生活までは変えられず、私の力量不足を痛感しました。ただ、彼らの言葉に「先生は話を聞いてくれる」と胸の内を明かしながら発する言葉に救われることがありました。

彼らが卒業し、私は勤務先が変わりましたが、新天地でも同じ部活をもたせていただくことができました。2年後の夏、いつものように大会で指導していると、卒業した子どもたちがあいさつに来ました。現在、就職していると報告してくれた彼らの表情は、部活をしているときの顔と同じでした。

学校にはさまざまな子どもがいます。行事・学習・部活などすべてに対して努力することに不器用な生徒もいます。しかし、彼らにも実現したいことがあり、夢や目標をもって取り組みたいことには、みんな同じです。彼らの話を聞き、根気よく関わり続けることで少しずつ変わってくるものだということを改めて考えさせられました。

生徒との出会いと成長は、実は教師自身の成長でもあるということをドラマ「ルーキーズ」と今まで関わった子どもたちから学びました。

「子どもの数だけ夢がある」その言葉をいつも心の片隅において、今日も子どもたちと接しています。

(2012年9月10日)

出会いこそが教師をつくる

●瀬上 圭太
(せがみ・けいた)

新城市(鳳来町)、岡崎市、犬山市、扶桑町の5つの小中学校にて、多くの先生方や子どもたちと関わり20年。現在は、扶桑中学校に勤務している。校務主任として3年目となり、花壇の花を育てることが子どもを育てることと重なることが多く、育てる過程を楽しんでいる。今年度は、教職大学院へ行き、学問の領域から自分の実践を問い直している。この2年間が今後の教員生活において最大限に生かされるように多くのことを学びたいと思う。趣味はサッカー観戦。西尾張サッカー協会3種委員長を務めている。