愛される学校づくり研究会

★新教育コラム「学校マネジメント考」開始にあたって

 管理職には、特に「学校マネジメント力」が必要であると言われるようになりました。ところが、愛される学校づくり研究会の中で「学校をマネジメントするとは具体的にどういうことか」ということを話題としましたが、お互いになかなか明確に示すことができませんでした。
 そこで、それぞれが考える「学校マネジメントの具体例」をリレーで示しながら、考えを深めていくことにしました。皆さんからもご意見をいただきたいと思い、いわば研究会の内部資料ですが、その公開もかねて、この教育コラムを始めました。

学校マネジメント考【12】 
 ― 大府市立東山小学校校長 小竹紀代子

「生涯小学校教員」と思って教員生活25年が終わろうとする年の3学期、「来年度から中学校で教頭として勤務する」宣告を受けました。「小学校も中学校も基本的には同じ」という無責任な先輩のアドバイスを胸に、初の中学校勤務が始まりました。
 部活動での教師と生徒の結びつき、本質は変わらないが大きくなる生徒指導上の問題、成績に関わる保護者からの苦情、メールがらみのいじめ、3年生になっても進路が見えず荒れる生徒、そんな中とりわけ心痛んだのは、自己肯定感の低い生徒たちのことでした。小学校1年生では、大きなランドセルいっぱいの期待を胸に、自分の可能性を信じて入学してくる子どもたちだったのに。でも、中学校勤務を経験して、小学校教育の在り方を考えることができました。「中学校を見通した学校経営」ができる校長になろうと決めました。

1 現状を把握する

平成23年度に赴任した学校は、平成22年度に総務省「フューチャースクール実証校」文部科学省「学びのイノベーション事業」にも取り組んでいました。教職員は、真面目で地道な教師集団で、職員室では余分な話などしないおとなしい人、努力の人たちでした。

2 原因を特定する

教職員の誠実で真面目な態度は、多分に教務主任の影響が大きかったと思います。また、職員室で余分な話などせず黙々と仕事に取り組む姿勢は、これまでの管理職から指導されてきた結果でした。

3 目標を設定する

わたしは、職員室においてはときには教職員が元気な声で話をすることが必要だと考えています。話せば、誰かが助けてくれるし、手をかしてくれる。子どものことが自由に話せる職員室は大事です。
 そこで「笑いと話題のある職員室をつくろう」と提案しました。また、中学校から見た東山小学校を常に念頭に置いて、
 1学期 子どもの生活を変える
 2学期 授業をかえる
 3学期 検証する
を、平成24年度の目標としました。

4 手段を企画する

5 集団意志を決定する

6 手段を実施する

4、5、6を明確に分けて記述するのはむずかしいので、混在しますが書き進めます。
 1学期に「子どもの生活を変える」ことを提案したのは、生活面で何か一つできるようになったことが目に見えれば、そのことが学校の自信につながると考えたからです。「凡事徹底と率先垂範」の言葉を職員会・PTA総会・朝会・学校だより・ホームページ等で発信し続けました。あいさつは、すぐに画期的にできるようにはなりませんでしたが、靴箱の整頓はまず6年生が、その次に5年生ができるようになり、明らかな変化が見えました。目に見えるからほめられる、するとまた気をつけるようになる、他の学年にも広がる、プラスの連鎖でした。

一方で、校長の思いを4役会で伝えるようにしました。優秀な人たちですので、自分たちのやり方で、学校をかえるように動いてくれました。例えば、中学校を見据えて、問題が起こったときは、クラスではなく学年で対応することなど、学年に伝えていきました。教頭、校務主任は中学校経験があるので、教師への指導の切り口が的確でした。教頭、教務、校務はそれぞれ授業をもち、子どもとの関係が密になるので、子どもたちへの影響力が大きいです。

2学期の「授業をかえる」の根本は、「学習課題を提示することの徹底」でした。学習課題の提示によって、児童は見通しをもって学習に臨めます。また教師は板書を工夫します。板書が変われば、ノート指導も変わります。算数において学習課題提示はできても、国語など教科によって曖昧になっている例がいくつかありました。ここでは、教務主任が踏ん張りました。子どもたちの学力向上のために目標に「きらきら通信」という教務だよりを発行して、実際の授業につながる実践を紹介しました。
 本校は、2つの中学校へ子どもたちが進学します。小学校の校長として、2中学の経営方針や様子を把握することに努めました。小学校には小学校の校長がいるのだから、中学校のことなど気にしないで、学校経営をすればいいという考えもあるかも知れませんが、子どもたちの滑らかな中学校生活への移行を考えると、そんなことも大事だと思います。一方では、中学校には中1の4月は、踏ん張ってほしいとも思っていますが。

7 比較(評価)する

2学期ころより、あいさつがよくできるようになってきており、学校評価アンケート結果も良好でした。しかし、生活面では不十分なことも多く、節目節目の指導が大事です。 授業についての評価は、日々積み重ねられる授業を自分の目で確認することが重要です。学校だよりやホームページをアップするために、授業中の教室に出向いていきます。授業はよい方向に少しずつ変わりつつあることを認められる反面、新たな課題も浮かんできます。教員一人一人の意欲を高めながら、来年度に向けて、重点目標を定めているところです。

(2013年2月4日)

学校マネジメント考

●小竹紀代子
(こたけきよこ)

現在、大府市立東山小学校校長。大学時の「小学校国語教育」の授業で取り上げられた「一つの花」に感動し、読解の授業実践をしてきた。1年生の担任をしたときは「1ねん1くみ せんせいあのね」のような文を書かせたいと願い、一枚文集を出してきた。しかし、未だに発展途上である。「宝塚歌劇団」「劇団四季」「東宝ミュージカル」が大好きで、特に「エリザベート」の大ファンです。