愛される学校づくり研究会

★新教育コラム「学校マネジメント考」開始にあたって

 管理職には、特に「学校マネジメント力」が必要であると言われるようになりました。ところが、愛される学校づくり研究会の中で「学校をマネジメントするとは具体的にどういうことか」ということを話題としましたが、お互いになかなか明確に示すことができませんでした。
 そこで、それぞれが考える「学校マネジメントの具体例」をリレーで示しながら、考えを深めていくことにしました。皆さんからもご意見をいただきたいと思い、いわば研究会の内部資料ですが、その公開もかねて、この教育コラムを始めました。

学校マネジメント考【1】 
 ― 海部教育事務所長 玉置 崇

かつて政策研究大学院大学教授の岡本薫氏の講演を聞いた時に、学校にはマネジメント力が不足していると指摘されたことがありました。その際に示されたマネジメントの流れです。

(1)現状を把握する (2)原因を特定する (3)目標を設定する (4)手段を企画する (5)集団意思を決定する (6)手段を実施する (7)比較(評価)する 
⇒「結果」(結果が次の「現状」になる。)

管理職がこの(1)から(7)の流れを意図的に作り出した時にマネジメントをしたと考えればいいのでしょうか。(1)から(7)の段階で、どこかに関わることがマネジメントをしたことになるのでしょうか。スタートから悩みが出てきてしまいました。このコラムでは、筆者自身がこうして悩みを示しながら、コラムをリレーすることを通して、学校マネジメントについて、菅総理風に言えば「一定のメド」を立てたいと思います。


 今回はとりあえず「(1)現状を把握する」ことに特化して考えてみます。
 管理職は、どのようにして現状を把握するのがよいのでしょうか。思いつくことを挙げてみます。

  • 自分の目で把握する。(校内・校外巡回で子どもや教師の姿を見る)
  • 各種調査結果から把握する。
  • (過去の)生徒指導や保健指導記録から把握する。
  • (過去の)学校評価から把握する。
  • (過去の)学校・学年・学級経営案から把握する。
  • 教職員から現状を聞く。
  • PTA役員等から現状を聞く。
  • 外部の方を招き、外部の目からのとらえを活用して把握する。

自分が校長であったころを振り返ると「自分の目で把握する」ことを多用していました。これは多くの方がとられていることだと思います。
 校内巡回では、しばしば、校長として求めている生徒の学びの姿とかけ離れた様子を目にすることがありました。長年、「学び続ける子どもを育てよう」という目標を掲げてきた学校の姿として、残念な状況を見ることがありました。それは学級の問題なのか。指導者の問題なのか。学校の方針が伝わっていない、方針の具現化がなされていない問題なのか。一つの事象から様々な要因が頭に浮かびます。
 もちろんとらえた課題を片っ端から改善しようというわけではありません。そのようなことはもともと不可能です。自分のとらえ方が偏っているのかもしれません。

 そこで、5役会(校長、教頭、教務主任、校務主任、事務主査)で、まずは自分のとらえを率直に話してみることにしました。
 「挨拶がなかなかできない」
 「授業を受けている生徒の表情が硬い」
 「学力は高いと言うが授業の様子からは感じられない」
 「生徒同士の関わり合いの場面が乏しい」
など、気になった生徒の様子をはじめ、教師の姿や備品、施設、環境整備状況など話題は様々です。単に校長のボヤキを聞いてもらったわけではありません。話題に対しての意見交換を大切にしました。自分の思い違いがあったことも知ることができました。今思えば、この意見交換が功を奏したと思います。

 こうした過程を通して5人の中に共通認識が生まれたことは確かです。徐々に課題を絞り、次の段階「(2)原因を特定する」に移行していきました。

***

この教育コラムは他と比べると主張は弱く、「読み手にストレスを生み出すコラムだ」という評価をいただくかもしれません。主に愛される学校づくり研究会の会員が「学校マネジメント」というキーワードと冒頭に提示した岡本氏のマネジメントの流れを手がかりに、今、自分が考えるマネジメントの具体例を順に述べていくコラムです。紆余曲折・迷い道の連続というようなコラムとなると思いますが、温かくお読みいただければ幸いです。では、次の方へバトンを渡します。

(2011年6月6日)

学校マネジメント考

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

現在、愛知県教育委員会海部教育事務所長。校長、教頭時代に校務の情報化に邁進。文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」(平成21年3月発行)の執筆者の一人。現在、「学校教育の情報化に関する懇談会」委員。
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