愛される学校づくり研究会

★このコラムでは、「愛される学校づくり研究会」で発表された実践を掲載します。

【第6回】愛される学校づくりは特色ある学校づくりからPART2
 ―「探究学習」の実践を通して―
 〜春日井市立味美中学校長 堤 泰喜〜

特色ある学校づくりということで、本校では総合的な学習の時間に、「探究学習」を行っています。
本校の「探究学習」とは、すべては、子どもたちの「知りたい!」から始まる!
をキーワードとした問題解決的・協同的な学習です。

本来生徒は、知的好奇心に富み、自ら課題を見付け、自ら学ぶ存在です。
生徒は具体的な事象・事実に直面したり、さまざまな情報を収得していく中で、対象に強い興味や関心を持ちます。とりわけ、自分から「調べたい」「考えたい」と心底思う課題に対しては、生徒は自分が納得するまで追究し、真剣に取り組むものです。
 この学習の最も基本であるところの「知りたい!」にスポットを当て、知識注入型の学習形態から脱却し、生徒の主体的な学習、問題解決的な学習を構築する。これが探究学習の基本的スタンスです。こうした学習のプロセスの中で、生徒は課題を解決するための知識や技能を身につけ、それらを活用する力を自ら育んでいきます。
 課題について"自分なりの考え"で結論付けるためには、「なぜそのことが言えるのか」を立証する必要性に迫られます。生徒はさまざまな面からアプローチをし、調べ上げ、深く考えていきます。生徒は、追究すればするほど、思考すればするほど、「基礎的な知識の大切さ」を身をもって知ります。そしてそのことが、「もっと知りたい!」「さらに調べたい!」という意欲と行動につながっていくのです。

学ぶ意欲

 

テーマ

テーマは教師の助言に基づき、生徒が話し合って練り上げます。
 ※『テーマ一覧』はページ末にあります

体験活動の重視

生徒は、実際に体験したり、調査したりして、繰り返し対象に働きかけることで対象への思いを膨らましていきます。生徒は、データを取り、根拠を示して結論づけるために、アンケート調査・インタビュー・実験・観察・製作・栽培・見学など、さまざま体験活動を積極的に行い、課題の解決に必要な情報を収集します。

表現活動の重視

探究学習では、追究したことをA倍判のポスターにまとめて発表をします。相手を意識し、目的を明確にして伝えたいことを論理的に表現することで、自らの考えはより一層確かになっていきます。また、まとめる活動を通して、課題がより一層鮮明になったり、新たな課題が生まれたりしますが、それを克服していく取組が、学習の質的向上につながったり、表面的ではない"深まりのある学習活動"につながっていきます。

異年齢集団による協同的な学習

探究学習のグループは"縦割り"としました。小規模校である本校の生徒の"狭い人間関係"を拡げたいという願いからです。3年生は指導的な立場に立つことで、リーダーシップが育ちます。また、下級生に教えることで内容を整理でき、わかっていないことがわかってきます。下級生は上級生と共に携わることで探究学習を具体的にイメージ化します。探究学習では、他者と協同して課題を解決しようとする学習を重視しています。協同的に学ぶことの価値として、

  1. 多様な情報の収集につながる。
  2. 異なる視点から検討できる。
  3. 他者と一緒に学ぶことが、学習活動のパートナーとしての仲間意識を生み出す。

の3点をあげることができます。共に学ぶことが、個人の学習の質を高め、同時に集団としての学習の質も高めていくのです。

探究学習の実際

■課題の設定

<ガイダンス⇒テーマの設定>

1年生から3年生まで一堂に会し、「探究学習とは何か」について説明を聞きます。ガイダンス後、希望調査により各ジャンルごとに別れ、テーマについて話し合います。
 その後、1つのジャンルに2つのテーマを設定します。生徒は、テーマごとに別れますが、そのグループの中で1年生から3年生までの3つの"縦割り班"をつくります。

全校ガイダンス

▲全校ガイダンス

<課題の設定>
  • 疑問に思うことを話し合い、課題を明確にします。
  • 課題を解決するためには何について調べたらいいのか、「どんな迫り方をしたらいいのか」を話し合います。
  • 調査方法、体験の内容など、今後の取組の詳細を決め、役割分担をします。
班での話し合い

▲班での話し合い

■情報の収集

<多種多様な体験活動>

設定した課題を基に、生徒は、観察・実験・見学・調査・製作・聞き取りなど、体験活動を行います。こうした学習活動によって、生徒は課題の解決に必要な情報を収集します。探究学習では、「具体的な体験活動が何のための学習活動であるか」を、生徒がしっかりと自覚しながら実施することを指導しています。

街頭でのアンケート調査

▲街頭でのアンケート調査

実体験(ゲストティーチャーの指導)

▲実体験(ゲストティーチャーの指導)

専門家への聞き取り

▲専門家への聞き取り

<情報の蓄積>

探究学習では、体験を通した感覚的な情報だけでなく、数値化された情報などの多様な情報の収集が大切であることを指導しています。また、生徒一人一人に『探究ファイル』を持たせ、データの蓄積を行わせています。さらに、体験で獲得した情報は、作文などで言語化して、対象として扱える形で蓄積するよう指導しています。

■整理・分析

<分析から最終結論へ>

収集した情報を整理したり・分析したりして、思考する活動へと高めていきます。

留意点
  • どのような情報が、どの程度収集されているかを把握し、足らなければ再度収集を行います。
  • 比較して考える、分類して考える、序列化して考える、類推して考える、 関連付けて考える、グラフ化して考えるなど、どのような方法で情報の整理や分析を行うかを明確にして行います。

アンケートの分析

▲アンケートの分析

     ↓
 班員によるディスカッションにより「最終結論」を出します。

■まとめ・表現

<ポスターづくり>

情報の整理・分析を行った後、それを他者に伝えたり、自分たちの考えの"まとめ"として、A倍判のポスターづくりを行います。

視点
  • 相手意識や目的意識を明確にしてまとめたり、表現したりする。
  • まとめたり表現したりすることが、情報を再構成し、自分自身の考えや新たな課題を自覚することにつながる。
  • 伝えるための具体的な方法を身につける。 (スキルの習得)

ポスターづくり

▲ポスターづくり

<発表>

発表

▲発表

  1. 発表原稿をつくります。
  2. 中間発表を行います。
       ポスター・発表原稿の肉付けと再構築。
  3. 質問対策を練ります。
  4. 本発表(15会場)を行います。
<反省会>

生徒アンケートを実施します。

保護者を巻き込む

質問する保護者

▲質問する保護者

 「1日授業参観日」の午後に探究学習の発表を行うことにより、多くの保護者に参観してもらい、鋭い質問をしていただいたり、感想を発表してもらいます。
 保護者を巻き込むことが、「愛される学校づくり」につながります。

生徒の変容(今年度をふり返って)

縦割りグループでの協同学習が探究学習の特徴ですが、3年生がリーダーシップをとって1・2年生に指示をしたり、2年生が昨年度の経験を活かして1年生に教える場面が見られるなど、異年齢集団での協同学習の特徴が良く出ていたと思います。事後の生徒アンケートでも「縦割りで学習するところが楽しかった」「下級生に教えることで自分の知識の不確かさがわかることがあって、自分のためになった」「僕も上級生になったら、あの先輩のようになりたい」などと書かれてありました。


テーマ一覧

<20年度の探究学習テーマ一覧>
1.血液型で性格がわかるのは本当か 10.「ふるさと」は名曲か
2.ユーモアは人間関係をよくするのか 11.なぜ人は暗闇で恐怖を感じるのか
3.香りが人の心をリフレッシュさせることができるか 12.今の日本語は乱れているか
4.なぜきつねはずるく、おおかみは悪者だと言われるのか 13.夢の世界と現実の世界はつながっているか
5.紙飛行機を長く飛ばすにはどうすればよいか 14.集中力の達人になれるか
6.なぜ伊能忠敬は江戸時代に正確な地図を作ることができたのか 15.人はなぜ魚を釣るのか
7.日本料理が世界の料理の中で一番であるか 16.左利きは得か
8.色彩は私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか 17.日本は世界で一番すばらしい国か
9.食品を保存するにはどうすればよいのか  
<21年度の探究学習テーマ一覧>
1.外来魚は駆逐できるか 8.「早起きは三文の徳」と言えるか
2.「未知」の生物はどのように生まれたか 9.「おばあちゃんの知恵袋」は役立つと言えるか
3.石油に代わるエネルギー源は太陽光と言えるか 10.「占いは暮らしに役立つ」と言えるか
4.私たちにもアイデアグッズがつくれるか 11.人間は音楽を聞くとどうなるか
5.日本を元気にするにはどうすればよいか 12.日本人にデザインセンスはあるか
6.ディズニーは夢の国と言えるか 13.お茶は人の心を癒すか
7.誰でもイチローになれるか 14.相撲は日本の国技と言えるか
<22年度の探究学習テーマ一覧>
1.「エコ」で地球を救えるか 9.人はどんな時に癒されるか
2.日本の魚の固有種を守ることができるか 10.愛知県人は味噌好きといえるか
3.ロボットは人間を超えたといえるか 11.食品表示は安全と言えるか
4.「明かり」は生活に関わっているといえるか 12.マイケルジャクソンは"King of Pop"と言えるか
5.春日井市は魅力ある街といえるか 13.人はなぜすごいことに挑戦するのか
6.日本は「お菓子大国」といえるか 14.字は人の性格を表すといえるか
7.「一流」と言われる人に共通点はあるか 15.日本は世界大会で勝ち続けるといえるか
8.「寝る子は育つ」といえるか  

(2011年1月24日)

愛される学校づくり実践

●堤 泰喜
(つつみ・たいき)

1984年教員生活スタート。教諭20年(中学校11年・小学校9年)、春日井市教委指導主事3年、教頭2年を経て、現在、春日井市立味美中学校長1年目。学生時代は、男声合唱団に所属していたが、現在は全く音楽とは無縁の生活。熱狂的な「巨人ファン」で、プロ野球のテレビ観戦でストレスを解消している。