愛される学校づくり研究会

★このコラムでは、全国各地で教育の情報化に尽力されている皆さんへのインタビューを通して、情報化を推進するための肝について明らかにしていきます。情報化にかける思いや、予算獲得のポイントや学校現場での利活用率を高めるコツなど、様々な視点から語っていただきます。

【第3回】群馬県太田市編(その3)
 〜現場との密接な関係を持ち続けること〜

*お答えいただくのは、群馬県太田市教育委員会指導主事の伏島均さん。質問者は愛知県教育委員会海部教育事務所の玉置崇さんです。

玉置  前回では、第1回目に示された「校務の情報化を進める4つのポイント」のうち、2点について詳しく語っていただきました。
 今回は、あと2点についてお聞きします。
 1点目は「校務支援システム推進委員会」についてです。この委員会を立ち上げられたのは、「トップダウンでなく、ボトムアップのルール作りのためだ」と言われました。あくまでも学校現場の声を大切にしていこうという姿勢がここでも見られて大いに参考になります。
 この推進委員会はどのようなメンバーで構成されているのでしょうか。どのようなことを協議されたのでしょうか。そして、その結果、システム活用においてどのような変化があったのでしょうか。

伏島  はい、まず、メンバーについて説明します。
 学校側からは、情報主任会世話係校長代表、情報主任会世話係教頭代表、リーダー校代表(小)、リーダー校代表(中)、実践推進校(小)、実践推進校(中)、研究所C4th班長、事務部会長、養護教諭部会C4th推進委員、情報主任会部長代表の10名です。それに、教育委員会事務局では、学校教育課長、教職員係長、指導係長、健康教育課係長と担当指導主事です。業者からは、システム開発業者及びネットワーク担当業者が委員として参加しています。総勢20名ほどの委員会になります。
 次に、協議してきた内容ですが、通知表の印刷権限者の範囲、印刷時期の制限(初年度は、回線の混雑を考えて学期末の前1週間を小中で印刷時期に制限をかけた)、通知表共通形式の模索と原案作成、県内の校務支援システムの導入の動向等の情報交換などです。平成22年度は、6月と2月の2回実施します。6月は、ユーザーIDの職員番号移行についてを決定し、県費負担教職員は、職員番号でログインできるように8月からなります。また、2月には、新指導要録の実施に合わせて、従来はB4版で印刷していたものをA4版に改善する内容を提案する予定です。このように、C4thを運営する上で、市全体で共通ルールが必要なものを毎回検討し、校長会に具申し、市のルールとして決定しています。
 このような結果、校務システムを使う側に立ったルールが少しずつ確立され使いやすいものになってきています。また、システム開発会社に要望することでより学校現場で使いやすいシステム構築に役立っています。まだまだ、不十分な点もあり、今後も、使用する立場の声を推進委員会で検討し、より改善させていきたいと考えております。

玉置  メンバーのバランスが実にいいですね。学校現場、教育委員会、導入業者の三者による強いスクラムが、システムに命を吹き込んでいると思います。
 「校長会に具申し、市のルールとする」ということも素晴らしいことです。私がICT活用研究会長を務めていたときには、校長会への情報提供が不十分だったと反省しています。やはりリーダーにしっかりと理解してもらい、後押ししていただくことが大切ですね。反省しています。
 次に、最後のポイントについてお聞きします。私が現在委員を務めている文科省「学校教育の情報化に関する懇談会」でも話題になっているのは、教員研修についてです。どれだけ良いシステムを入れても、教員の意識改革をはじめ、研修がうまく進まないと効果はないと心配されている方が多数います。伏島先生も4つ目のポイントとして、「教職員への啓蒙」を挙げられました。「学校指導訪問時での教育委員会からお願い、校務システム研究班による実践マニュアル等の作成」といったことを示していただきましたが、この2点を中心に、詳しくお話ししていただきたいと思います。

伏島  はい、まず、システム導入時は、業者からの研修会が組まれております。しかし、次年度以降は、各学校で、研修を継続し、今まで使って慣れている先生方が、新しく転任し初めてシステムを使う先生に教え合うOJTの研修をお願いしております。もちろん、業者のナビゲートセンターのヘルプデスクには、適宜、各校からの質問に対処してもらい、即時に疑問を解消するようお願いしております。市としての研修会というものは行わず、導入後は、各校で実際に使いながらお互いのICT活用能力を高めていくというスタンスでお願いしております。
 その際のヒントとなるマニュアルが「群馬県版校務支援標準システム太田市版活用ガイドブック(平成22年2月1日)」です。PDF版を公開してありますのでご参考にしてください。( >>>PDF版はこちら
 太田市では、平成22年度は、すべての小中特別支援学校で、校務支援システムを使った出席簿、通知表、指導要録を作成しています。その他に、学校の実態に合わせて、学校日誌や保健日誌、成績資料、公立高校調査書などの帳票印刷を実施しています。連絡掲示板や書庫、個人連絡などのグループウェア機能は、毎年、拡大充実して活用されており、校内だけでなく、教育委員会と学校間のネットワークが充実しています。今後も、教職員の事務軽減によって生み出される時間を教育の質を高めるために還元し、市民の立場で費用対効果のあるシステム導入になれるよう事務局としてバックアップしていこうと思います。

玉置  いつまでも市が研修の音頭取りをせず、同じ学校での教え合いを大切にされていることが普及するポイントだと認識しました。
 伏島先生、3回にわたって、太田市の取り組みを詳しく教えていただきありがとうございます。情報化を推進するために教育委員会はどう動くべきか、その重要ポイントを示していただきました。太田市の取り組みを大いに参考にされる自治体がドンドン出てくることと思います。視察がさらに増えると思いますが、どうぞよろしくお願いします。

(2010年8月23日)

我が町の情報化

●伏島 均
(ふせじま・ひとし)

1985年、教員生活スタート。小学校教諭5年、中学校教諭16年。群馬県太田市教育委員会事務局学校教育課指導主事5年目。専門教科は理科。研究テーマは、自然や環境。
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●玉置 崇
(たまおき・たかし)

現在、愛知県教育委員会海部教育事務所長。校長、教頭時代に校務の情報化に邁進。文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」(平成21年3月発行)の執筆者の一人。現在、「学校教育の情報化に関する懇談会」委員。
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