愛される学校づくり研究会

★このコラムでは、全国各地で教育の情報化に尽力されている皆さんへのインタビューを通して、情報化を推進するための肝について明らかにしていきます。情報化にかける思いや、予算獲得のポイントや学校現場での利活用率を高めるコツなど、様々な視点から語っていただきます。

【第1回】群馬県太田市編(その1)
 〜情報化を推進する4つのポイント〜

*お答えいただくのは、群馬県太田市教育委員会指導主事の伏島均さん。質問者は愛知県教育委員会海部教育事務所の玉置崇さんです。

玉置  まずは太田市の校務の情報化の状況について簡単に紹介してください。

伏島  群馬県では、平成18年度県市町村教育長協議会の教員のゆとり確保専門部会において、校務の効率化・IT化を推進することを決定いたしました。
 19年度には、群馬県版校務支援標準システムを構築することを目的に、既存システムをカスタマイズする方針でシステム選考を行い「EDUCOMマネージャーC4th」を採択いたしました。
 この流れを受けて、太田市では、20年度に教職員のパソコン整備と同時に、校内LAN整備、校務支援システムの導入、教育委員会と学校間のネットワークの構築を行いました。
 システムの効果的運用のために、まず、20年度には小中3校ずつモデル校を指定して、帳票印刷を開始することをしてもらいました。21年度からは、取り組みの幅を広げ、出席簿、通知表、指導要録、調査書と成績一覧表(中学校)、児童生徒名簿などの作成も開始してもらいました。掲示板や会議室、個人連絡などのグループウェア機能も重宝され、既存の旅費システムや学校日誌システムと併用しながら、現在では市内の小中特別支援学校(43校)で、C4thの積極的活用を通して、校務の効率化を進めています。

玉置  なるほど!県市町村教育長協議会が旗振り役になって、「群馬県版校務支援標準システム」を決められたことは凄いですね。わが県ではここまではとても難しいと思います。
 あらためて振り返ってみると、この状況を作り出せた一番のポイントはこれだった!と言えるものがあると思うのです。ぜひ皆さんにご紹介ください。

伏島  1番目は、教育委員会の中で、「この校務支援システムの配備は、絶対に必要だ。教職員の校務の効率化が、子どもへ還元され、税金を有効に使う費用対効果のある投資である。」ことを精力的に説明したことです。学校教育担当課が、予算担当課や本庁の情報担当課、財政に説明しお願いしました。最終的には、副市長の「教員にゆとりを!」という考えが、追い風となり、幸運でした。
 2番目は、校務支援システムで対応できるよう管理規則の範囲内で、市のルールを改善していったことです。出席簿の細かな記載方法をシステムに合うよう変更したり、卒業生名簿も、縦書きだったものを横書きにしたり、外国籍児童生徒の生年月日を西暦であらわしたりと、情報化に対応した形に改善していきました。学校教育担当課は、教育現場である学校とシステム開発業者及びネットワーク担当業者との連絡調整を行い、常にイニシアチブを取ることが大切です。
 3番目は、トップダウンでなく、ボトムアップのルール作りのために、校務支援システム推進委員会を立ち上げたことです。現場の声を聞きながら、市としての運用ルールを決めていくことで、無理なく無駄なく、システムの活用が図られています。
 4番目は、使う教職員への啓蒙です。現在、太田市では情報教育整備事業として、年あたり約1億4千万円の事業費をかけています。平均すれば、教職員1人あたり年間10万円ほどの予算が、情報教育に使われおり、費用対効果を考えた教育の質の向上に努めてもらうよう、学校指導訪問の時などに、教育委員会からお願いしています。また、21年度から市教育研究所に校務システム研究班を立ち上げ実践マニュアル等を作成し、現場の立場で使うと便利なことを提言しました。

玉置  4点をあげてもらいましたが、その一つ一つが凄い!その中でも、特に2点目の「校務支援システムで対応できるよう管理規則の範囲内で、市のルールを改善」されたことは、他市町村が忘れがちなことだと思います。従来の形にこだわるためにせっかくの機器が使われないという状況はあちこちで耳にします。
 たとえば、私の市でも以前に「出席簿に赤線が入らないので使えない」という、私からすれば枝葉末節の理由のために機器利用が停滞したことがありました。今となっては、なぜそういうことにこだわったのだろうかと思います。今では、笑い話の一つです。
 次回からは、この4点の一つ一つをもう少し掘り下げてお聞きしたいと思います。

(2010年6月28日)

我が町の情報化

●伏島 均
(ふせじま・ひとし)

1985年、教員生活スタート。小学校教諭5年、中学校教諭16年。群馬県太田市教育委員会事務局学校教育課指導主事5年目。専門教科は理科。研究テーマは、自然や環境。
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●玉置 崇
(たまおき・たかし)

現在、愛知県教育委員会海部教育事務所長。校長、教頭時代に校務の情報化に邁進。文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」(平成21年3月発行)の執筆者の一人。現在、「学校教育の情報化に関する懇談会」委員。
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