愛される学校づくり研究会

★授業における「ICT活用」とは縁のなかった小学校が、1年後にはすべてのクラスに実物投影機が入り、毎日使うようになりました。1年間に起こった事実をお伝えします。1年間で学校も、子どもも、保護者も、職員も、そして地域も変わるのです。

【第11回】学校経営の基本の一つはメールとホームページ

思いがけない賞をいただくことになりました。「第10回インターネット活用教育実践コンクール」において文部科学大臣賞を受賞しました。応募テーマは「ネットで安心を届けた全校児童の2泊3日の離島体験」です。実践についてはこのコラムの第一回目において紹介させていただきました。

 要は、2泊3日の離島体験を行うに際してメールやHP(ホームページのこと)で情報を発信し、保護者に安心を届けたというものです。通称「ネットコン」と言われるこのコンクールは、インターネットの活用に主眼を置いたコンクールです。過去の入賞例を見ても、先進的なネット利用ばかりです。
 私たちのネット活用は単にメールとHPのみ。この程度なら、修学旅行など校外学習を中心に活用されている学校は多くあるはずです。にも関わらず、メールとHPを使っただけの実践が評価されたところにこのコンクールの意味づけがあるだろうと思っています。
 小規模校とはいえ、1年生の児童も2泊するのです。子どもたちよりも保護者の方が心配だったはずです。高学年でも、学校行事として校外での2泊はそれほど多くはないはずです。そのためこの行事の実施に当たり子どもたちの安全確保とともに、保護者に安心を届けることが大切だと思いました。幸い保護者は携帯電話でのメールは可能ですし、携帯電話やPCからHPを見ている方も多くなっています。
 そこでメールとHPを活用することにしました。skypeもできないことはありません。skypeでわが子と会話ができたら保護者はさらに満足するでしょうか。子どもも安心するでしょうか。

 私は以下の理由によりあえてskypeは使いませんでした。

  • テレビ電話はその性格上、リアルタイムに顔を合わせる必要があります。つまり時間の調整が必要です。キャンプをしているのに、決められた時間にPCの前に集まり、一言ずつ話すなどというのは本来の行事からは逸脱しかねない。また、保護者にしてもしかり。
  • 子どもたちは家族と離れ、仲間や職員との生活を送っているのです。低学年の児童にとっても、親の顔を見ることは必ずしもプラスにはならないと思います。
  • skypeは使いやすくなったとはいえ、保護者がソフトをダウンロードしてログインするためにはPCのスキルが必要です。日頃から使っている方はいいとして、新たにその設定はするのは敷居が高くなるので、勧めたくはありませんでした。
  • メールやHPは上記のような問題点は一つもありません。日常的な連絡手段をそのまま学校行事に使うというだけのことです。学校にも、保護者にも、さらには子どもたちにも負担感が全くないということは日常的なICT活用の基本の考えのはずです。

後で保護者は言いました。「携帯電話にさわったことのないおばあちゃんが、私の携帯を持って何度も見て喜んでいた」とか、「あっ、もう食事をしているとか、もう風呂に入ったんや、ということがリアルタイムに分かったので、すごく安心したし、私も一緒にキャンプに行っているような気持ち」と。

メールとHPを学校経営に活かすための校長の役割

インターネットの教育活用においては、メールとHPが基本です。たかがメールとHPだけど、されどなのです。
 太郎生小学校が全校児童の2泊3日の離島体験が無事できたことはメールやHPに支えられたものといえます。平日は毎日HPを更新していますし、メールも1週間に2回程度は発信しています。発信する側も、受ける側も慣れていたといえるのです。
 さらにあえて付け加えると、2泊3日の行事中のすべての発信は校長である私が行いました。子どもの指導に当たっている学級担任は子どもたちの活動中にメールを送ることはできません。しかし、管理職である私は、メールやHP更新のためのすき間の時間を見つけることは難しくはありません。校長が学校のことを発信するのは実は楽なのです。職務上、全体のことが見えているし、自分の判断と責任で発信できるのです。そのことが職員を支えるであろうことをちょっとだけ自負しています。
 このサイトを見ていただいた管理職の先生方、ぜひご自分の手で学校メールを発信しましょう。また、自分でHPを更新してはいかがですか。保護者のストレートな反応がありますよ。ブログ形式のHPなら10分前後で更新できます。
 このサイトを見ていただいている管理職ではない先生方。ぜひ管理職を動かして下さい。その気にさせてください。そして、皆さんが管理職になった時は、学校からの情報発信をご自分の手で行い、活気のある学校経営をされることを期待しています。

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▲中林も授業(4年国語)をしています。左は職員室で木版画について説明しているところ。

(2010年3月1日)

中林校長

●中林則孝
(なかばやし・のりたか)

1951年生まれ。津市立太郎生(たろう)小学校校長。一輪車が小学校に普及し始めた頃、練習を継続すれば大半の児童が一輪車に乗れるようになることを知り、「練習量が、ある時、質に転化する」ことを実感する。その後、「デジタルとアナログの両面で子どもを鍛える」実践を進める。校長となった今も、担任時代のスタイルを踏襲し、補欠の授業に入れば子どもに作文を書かせ、それをほぼ毎日発行の「学校便り」に載せている。講演を聞きながらタイピングできるという特技を持つ。
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