愛される学校づくり研究会

★授業における「ICT活用」とは縁のなかった小学校が、1年後にはすべてのクラスに実物投影機が入り、毎日使うようになりました。1年間に起こった事実をお伝えします。1年間で学校も、子どもも、保護者も、職員も、そして地域も変わるのです。

【第10回】フラッシュ型教材はクイズのような楽しさがある

どこの学校の「経営要覧」でも、どこの学級の「経営案」でも、「基礎学力」のことをうたっているはずです。新学習指導要領になり、一層学習内容の習得・習熟が強調されています。しかし、「基礎学力の向上」のための具体的な方策が示されているでしょうか。単なるスローガンや方向性を示すだけにはなっていないでしょうか。
 前回に続いて、フラッシュ型教材のことを取り上げます。
 5年生の算数の時間のこと。黒板に貼ったスクリーンにはフラッシュ型教材が映し出されています。「0.3」 担任が小さな声で「歩合」というと子どもたちは大きな声で「3割」と答えます。「百分率」と担任が言うと、「30%」と答えます。
 数字が変わります。「13%」とでると、子どもたちは「1割3分」「0.13」と間髪入れずに言います。全員が言ったり、一人ずつ言ったり。「3.05」を「305%」「30割5分」という難しいものも理解しています。

今頻繁に使っているスライドは割合のスライドです。小数を歩合や百分率に直すものです。その逆(歩合を小数に、または小数を歩合に)も使うことができ、1枚のスライドをいろいろと応用できます。シンプルです。教科書では歩合はあまり大きく取り上げられていませんが、毎日練習することで早く間違いなく変換できるようになりました。(大澤教諭)

このサイトをご覧いただいている先生方。ご自分のクラスでの割合の言い換え、完璧に出来ますか。

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フラッシュ型教材は、理解に時間のかかる児童には特に有効です。実例を示します。

漢字に苦手意識を持っていて、宿題をあまりやってこない子がいます。学校で書き取りの練習をさせても集中力がなく、他の子たちとどんどん差がついていきます。いやいや書いているので、力がついているようには思えません。どうかしてその子に漢字の力をつけたいと思い、使ったのが漢字フラッシュでした。
 使い方を試行錯誤し、ゲーム感覚でクイズのようにするとその子の目が輝くことに気がつきました。「漢字フラッシュはいける」と思いました。同じカードを使って、部首だけを言わせたり、音読み、訓読みを言わせたり、筆順をさせたり。その子は全員で言う時には誰よりも早く言いたいし、男女対決では燃えるし、一人ずつ言わせるときは緊張感も伴うし……というように変化のある繰り返しで集中力もとぎれることなく取り組むことができました。
 また、手を挙げて言わなくてもいいので、普段消極的な子も一番に言えるなど逆転現象が起こることもあるので、その子たちにはとても自信になったりもします。(廣崎教諭)

さらにドラマは続きます。「休み時間にプロジェクタを準備して映していると、ついつい言いたくなってくるらしく一人が答え始め、さらに二人三人と集まってきました。3年生の漢字を2年生がチャレンジしたり、3年生も負けじと参加してきて大合唱になったり(複式学級)。授業なのか休み時間なのか分からなくなったこともありました。それぐらい、子どもたちはゲーム感覚で楽しめているのだと思います。こどもたちを飽きさせない工夫は必要ですが、どうしても覚えさせたいことがあると、フラッシュ型教材を作ろうと思うようになりました」と、廣崎教諭は言います。

 応用例 「社会で都道府県を覚える際に使っています。その県の特産品や文化財などを見て地名を答えるものです。スリーヒントの要領で作ってあるのでクイズのように盛り上がります。また百人一首のスライドもあり上の句、下の句、作者に分かれています。スライドを出す順番を変えることによって応用が効きました。黒板に書いたり、カードを提示したりすると枚数が多くなり大変ですが、フラッシュ型教材だと、手間が省けます」(大澤教諭)。

 このようにフラッシュ型教材は優れた教材であり、指導方法ですが、習熟・習得させるという限定した場面で使います。薬に万能薬がないのと同じように、ピンポイントで使うのがフラッシュ型教材です。しかし、学力向上ということでは、一点突破への可能性が大です。

 フラッシュ型教材は無料で手に入ります(⇒フラッシュ型教材ダウンロードサイトe-teachers)。ぜひ、チャレンジして、目から鱗が落ちる実践を体験してみてください。

(2010年2月15日)

中林校長

●中林則孝
(なかばやし・のりたか)

1951年生まれ。津市立太郎生(たろう)小学校校長。一輪車が小学校に普及し始めた頃、練習を継続すれば大半の児童が一輪車に乗れるようになることを知り、「練習量が、ある時、質に転化する」ことを実感する。その後、「デジタルとアナログの両面で子どもを鍛える」実践を進める。校長となった今も、担任時代のスタイルを踏襲し、補欠の授業に入れば子どもに作文を書かせ、それをほぼ毎日発行の「学校便り」に載せている。講演を聞きながらタイピングできるという特技を持つ。
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