愛される学校づくり研究会

★授業における「ICT活用」とは縁のなかった小学校が、1年後にはすべてのクラスに実物投影機が入り、毎日使うようになりました。1年間に起こった事実をお伝えします。1年間で学校も、子どもも、保護者も、職員も、そして地域も変わるのです。

【第8回】ICT機器は教室に常設してこそ活用できる

ICT機器、とくに実物投影機を使うと「分かりやすい授業をしやすくなること」を太郎生小学校の職員は実感しています。そのため、毎日ICTを使うようになりました。まさに日常的なICT活用です。
 ICTを毎日使うためにもっとも大事なことは何でしょうか。
 日常的にICTを授業に使うためのもっとも大切なポイントは、

   “ ICT機器を教室に常設しておくこと ”

につきます。他のところ、例えばコンピュータ室や職員室、書庫などにプロジェクタや実物投影機、スクリーンを置いてあると、日常的な活用には至らないというのが、私たちの学校での実践を通して強く思うことです。
 逆に、教室に常設してあれば、誰でも日常的に使うようになります。ICTに強い教員ではなくても、授業で子どもたちの学力をしっかりと定着させたいという、教員としての最低限の資質さえあれば、使うようになります。

 ICT機器を教室に常設してある場合と、パソコン教室などに保管してある場合を比較すると、私の感覚では常設だと毎日の使用率が100%に対して、パソコン教室保管だと10%以下だというのが、実感です。別の言い方をすると、「教室に置いてあると使う」けど、「パソコン教室だと使わない」ということです。
 パソコン教室から、プロジェクタと実物投影機、スクリーンを教室に持ってきて設置するには時間も手間もかかります。プロジェクタを置くための机も必要ですし、電源の延長コードも準備しないといけません。さらに、プロジェクタをセッティングをして映すには慣れも必要です。毎日使っていると簡単にできる準備も、たまに使うだけだと不慣れも手伝い、ストレスとなりかねません。これでは「分かりやすい授業」どころではありません。
 ところが、常設してあると簡単に使えます。例えば、.太郎生小学校の教頭は今年が1年目で、これまではICTを授業に使ったことはなかったといいます。でも、今は授業のために教室に入ると、まずすることはプロジェクタのスイッチを入れることと実物投影機のホコリよけの手作りカバーを外すことだといいます(手作りカバーは元太郎生小校長が大きさを合わせて作ってくれた特製品)。そして、授業の流れの中で必要があれば教科書などを拡大投影します。授業が終わればスイッチを切るだけです。スクリーンは黒板に貼ったままです。
 下の2枚の写真は放課後の教室です。スクリーンは貼ったまま。手前にはプロジェクタと実物投影機が置いてあります。専用のカバーもあります。

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「そんなことを言っても高価なICT機器を教室の数だけそろえられない」と思われる方が多いでしょう。確かにこれは大きなハードルです。でも、物事はなんでも「1」から始まるのです。たった1台のプロジェクタと実物投影機を活用するコツがあるのです。
 それは1週間ぐらい同じ教室に置いておくことです。つまり、今週は1年教室に実物投影機とプロジェクタ(それとマグネットスクリーンも)を置いておく。翌週は2年というように順に回るわけです。1週間がむりなら、3日ぐらいでもいいでしょう。
 同時にもう一つの仕掛けを準備します。校内研修会の冒頭に必ず実物投影機を使う練習をします。時間は10分以内で十分です。算数の教科書を拡大して説明することでいいと思います。いわば模擬授業。教科書を大きく提示して、「問題を読みましょう」でもいいし、「単位は何ですか」と発問しながらそれが分かる言葉に線を引くのでもいい。図形の単元ならもっと効果的な発問が準備できます。子どものノートを拡大投影し、「上手な字はどれかな」というだけでも授業は成立します。すると、確実にていねいに書くようになります。

 この2つの仕掛けを用意することで、必ず担任は動くはずです。自分のクラスに実物投影機が回ってくることを楽しみにすると思います。そのうち、「実物投影機を使うとこんなに便利だった」という声が職員室で上がるはずです。太郎生小学校はそうでした。一人の例外もありませんでした。
 ここまで来ると、後は予算をどのように確保して2台目、3台と増やしていくのかということを職員みんなで議論できます。毎日使うものですから、きっと優先順位は高くなるでしょう。

(2010年1月18日)

中林校長

●中林則孝
(なかばやし・のりたか)

1951年生まれ。津市立太郎生(たろう)小学校校長。一輪車が小学校に普及し始めた頃、練習を継続すれば大半の児童が一輪車に乗れるようになることを知り、「練習量が、ある時、質に転化する」ことを実感する。その後、「デジタルとアナログの両面で子どもを鍛える」実践を進める。校長となった今も、担任時代のスタイルを踏襲し、補欠の授業に入れば子どもに作文を書かせ、それをほぼ毎日発行の「学校便り」に載せている。講演を聞きながらタイピングできるという特技を持つ。
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