愛される学校づくり研究会

★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。

【25回】授業力を高める学校経営見聞録2

onishi_small.gif大西貞憲(授業を見るプロ) tamaoki_small.gif玉置崇(インタビュー)
 

tamaoki_small.gifいよいよ最終回となりました。前回に引き続き、学校全体の授業力を高めるために尽力されていた校長の姿勢やその取り組みを紹介していただきたいと思います。さらに、管理職としてはこのような点も考えたらどうかといった視点を与えていただけるとありがたく思います。
 


onishi_small.gif学校全体の授業力を高めている学校に共通しているのは、教師個々へのアプローチを大切にしていることです。数人の教師の授業を変えていくことで、学校の中によい具体例を作り、その例を学校全体に広げる方法をとっています。
 自ら変わろうという向上心のあるベテランや中堅がいれば、その方の取り組みを見て学び合えばよいのですが、ともすると「あの人だからできることなのだ」と自ら進んで変わろうとしない教師がいます。そこで、例えば、若手教師にアプローチして授業改善を図っていきます。こういった教師の授業がよくなってくると、周りの教師もよい意味でプレッシャーを感じ、学校全体の授業改善に対する意識が高まってくるからです。

 
 

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では、このような学校は具体的にはどのように動いているか、私が見聞きしてきた事柄を紹介しましょう。
 どの学校においても共通していたのは、授業研究を個別指導のきっかけとしていたことです。そのために、授業研究はできるだけ多くの教員が行うように決められていました。なぜ私だけが選ばれるのかと後ろ向きにしないためです。
 授業者には、リーダークラスの教師が「どんなふうに進めるか、一度一緒に考えてみようか」といった声かけをしています。あれやこれやと指導するのではなく、考えを聞いてあげることを中心にして、授業について話ができる関係を作ります。若手や有志を募って事前に検討会や模擬授業をして、みんなで学び合う雰囲気を作っていた学校もありました。模擬授業は他教科の教師でも子ども役になることで意見が言いやすく、教科性が強い中学校や高校でも有効な学び合いの場になります。本番の研究会では、できるだけうまくいったことを中心に話をして、事前に話を聞いてもらってよかった、みんなに助けられてよかったという気持ちになるようにしていました。
 こうすることで、そのあとも授業についてアドバイスする機会を持ちやすくなります。また、検討会などに参加した教師も自分たちがかかわった授業がポジティブに評価されることで気持ちが前向きになるので、継続的にグループで話し合う機会を持つようにすることができます。そして、ある程度授業が改善されたところでもう一度授業研究をしてもらい、その進歩を学校全体で認めるようにするのです。このような個別の動きは管理職ではなく、リーダークラスの動きが大切になってくるので、うまくいっている学校の管理職は、彼らとのコミュニケーションを非常に密にとっています。
 こうして学校全体の授業力を高めることに成功した学校でも、校長が変わり何人かの核になる教師がいなくなると、しだいに授業力が低下していくことがよくあります。管理職の方に是非意識してほしいことは、自分がいなくなっても授業力が向上し続けるためにどうすればよいか考えることです。ある管理職の方は、「授業について教師が学び合うことを学校の文化にしたい」とおっしゃっていました。伝統と言い換えてもよいかもしれません。そのためには、授業を見せ合い語り合うことが当たり前になること。「あそこがいけなかった」というネガティブな発言ではなく、「あそこをまねしたい」というポジティブな発言が増えること。「授業を見せてよかった、勉強になった」「次は自分が見せたい」という前向きな気持ちになること。このようなことを大切にしていただけたらと思います。
 

tamaoki_small.gifやはり「校長のリーダーシップ」に尽きますね。この言葉は、校長の立場になったら、耳にたこができるほど聞きました。その割に、大西さんが示していただいたような具体的なリーダーシップの取り組み例は聞こえてこないのが残念です。  ちなみに「校長のリーダーシップ」という言葉で検索してみましたら、ヒット件数は、11900件、これを「教頭のリーダーシップ」としたら456件でした。数値的には、校長の方が26倍もリーダーシップが求められているわけです。「教育事務所長のリーダーシップ」ではヒット数は0件。私にはリーダーシップは求められていないということです(笑)。  大西さんには、25回にわたる難問にいつも真摯に答えていただき大西さんによる、ありがとうございました。授業を見るプロの眼力のすごさに、毎回、脱帽状態でした。ブログ発信も始まりましたので、今後はそちらのサイトで学ばせていただきたいと思います。
 

(2010年7月12日)

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●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。
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