愛される学校づくり研究会

★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。

【第21回】子どもが集中力を高める授業

onishi_small.gif大西貞憲(授業を見るプロ) tamaoki_small.gif玉置崇(インタビュー)
 

tamaoki_small.gif子どもの集中力を高める授業技術はいくつも出てきますが、子ども自身が知らず知らずのうちに集中力を高める授業構造について述べている方には、これまで出会ったことはありません。そこで、ぜひ大西さんにお聞きしたいのです。このような授業を創り出すためには、どのような構造が必要なのでしょうか。
 


onishi_small.gif授業中に子どもの集中力が高まる条件は、ゴールが明確で、そこへの到達手段が具体的になっていることだと思います。活動が具体的で明確でも、その活動の結果何が得られるか、何が解決するかというゴールがはっきりしていなければなかなか集中して取り組んではくれません。例えば、「机を後ろに片付けなさい」と指示するよりも、今からゲームをするから、その場所を作るために「机を後ろに片付けなさい」と指示する方が、より集中して片付けると思います。また、ゴールが明確でも、どうすればそこに到達できるのかわからなければ集中力はすぐになくなります。算数や数学などの問題演習などはゴールがはっきりしている例ですが、こうすれば解けるという見通しが持てないとすぐに手詰まりになって集中力が落ちてしまいます。逆にこうすれば解けそうだという手がかりが見つかると集中力が上がっていきます。社会科の調べ学習などでも、手がかりとなる資料が見つかると集中力が上がってきます。ここで大切になるのは、到達できた、近づいているということがはっきりわかるゴールになっているかどうかです。

 
 

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英語の授業でのことです。事前に学習した物語を人形劇にして教師が英語で説明している場面でした。子どもたちは一生懸命聞いていたのですが、次第に集中力をなくしていきました。英語を聞いて理解するというゴールは分かっているのですが、ずっと聞いているだけで、それが達成されたかどうかは実ははっきりしていません。理解するというゴールは子どもたちにとって到達できているかどうかが明確にわかるものではなかったのです。そこで、話の途中に質問を入れるようアドバイスをしました。教師が質問するたびに、「ここはちゃんと理解できたぞ」「あそこがわかれば答えられたな」と自分が理解できているか確認できます。今度は最後まで子どもたちの集中は切れませんでした。

 子どもたちがなかなか集中しないときはゴールが不明確な場合や何をすればよいかがわかっていないことが多いようです。一旦流れを止めて、ゴールや具体的な活動の確認をしたり、見通しを持たせたりする必要があります。また、最初は集中していたのにだんだん集中力がなくなってきたような場合は、ゴールに近づいているかどうかがわからなくなってしまっていることが多いようです。ゴールを再確認し、スモールステップを意識して、今どのあたりまで到達しているのかを明確にしたり、「ここまではOKだよ」と部分肯定したりすることで再び集中力を取り戻します。ゴールとそこへの到達手段、そして到達度を意識させることで子どもたちが集中力を高める授業になると思います。

tamaoki_small.gif何事もゴールをまず意識させることが大切ですね。時々見受けられるミステリーツアーのような子どもたちをいったいどこにつれていこうとしているのか分からない授業。こういう授業で子どもたちがだれてくると得てしてあるのが、「頑張れ!しっかり!」といった抽象的な到達手段での指示。
「ゴールと到達手段の明確さ。そして小刻みな評価活動の3点セットで集中力を高める」
どの授業でも忘れてはならないことですね。
 

(2010年5月10日)

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●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。
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