愛される学校づくり研究会

★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。

【第16回】続:グループ活動の見極め方

onishi_small.gif大西貞憲(授業を見るプロ) tamaoki_small.gif玉置崇(インタビュー)
 

tamaoki_small.gif第15回では、グループ活動の前提として、子ども同士がかかわり合えるようにしておくことが大切である、そのためには、日頃の教師の指示や課題が「友だちの話を聴く必然性」や「かかわり合う必然性」を生み出すものであることが重要であると教えていただきました。いわばグループ活動を取り入れる前の教師の働きかけについて示していただいたわけです。では、グループ活動中には教師はどのような視点をもって、子どもたちを見ているとよいのでしょうか。
 


onishi_small.gifグループ活動をしているときに、教師が特定のグループや個人に対して個別にかかわりすぎると、子どもと教師との関係が強くなりすぎて、子ども同士の学び合いを阻害してしまいます。また、どうしても学級全体が見えなくなってしまうので、活動がうまくいっていないグループを見落としてしまったりします。そこで、まずは学級全体が見渡せる場所で、子どもたちの活動がうまく進んでいるか、互いにかかわれているかを観察し、その上で必要な支援をおこなうようにします。このとき、子どもたちの様子がどういうことを示しているのかを注意して対応することが大切です。
 次の3つの例は、一見するとグループの活動が止まっているように見える場合ですが、その状況はずいぶん異なっています。

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互いに話し合ってはいないが、子どもの体が前に傾いて資料をじっくり見ているようなときは、子どもたちは深く考えています。あせらず子どもたちが動き出すのを待てばよいでしょう。
 周りと少ししゃべっては資料をぱらぱらと見たりしているときは、課題を理解できていないために、何をしてよいかわからない状態であることが多いようです。一旦グループ活動を中止して、もう一度課題の確認をする必要があります。
 友だちとかかわらず黙々と自分の作業をしたり、手遊びしたりする子が増えているときは結論が出てしまったりしてもう話し合う必要がなくなっているときです。グループ活動を終わるべきでしょう。
 この他にも、子どもたちのテンションが高いときは、一見積極的に話し合っているように見えても、自分の意見を言うことに一生懸命で友だちの話を聞けていなかったり、意見に根拠がない無責任な発言をしたりしている場合が考えられます。「友だちの意見で参考になったところを話して」と聞く必然を持たせたり、「理由もちゃんと言ってね」と根拠に基づいて発言するように働きかけたりします。
 もちろん、グループ全体の様子だけでなく、一人ひとりの様子も観察します。グループの中で、特定の子どもが話し合いに参加できていないようであれば、「気づいたことがあったら話してごらん」、「わからなければ聞いてごらん」などと子ども同士をつなぐような働きかけをおこないます。
 グループ活動はすべてのグループで子ども同士がかかわり合い、学び合うことが大切です。教師の支援は、子どもたちのグループ活動がうまく進むための最低限にとどめ、グループ全体を見守るようにしたいものです。
 

tamaoki_small.gifなるほど、「学級全体が見渡せる場所で、子どもたちの活動がうまく進んでいるか、互いにかかわれているかを観察し、その上で必要な支援をおこなうようにします」という言葉は肝に銘じておきたいですね。
 グループ活動を始めると、すぐにそれぞれのグループを回り始める教師がいますね。特に研究授業等で多くの先生方が見ていると、「いつもよりよけいに回っています」という海老一染之助・染太郎のような人(笑)もありますからね。落ち着いていられないのは分かりますが、無目的に動いて、子どもたちの邪魔する人も少なくありません。
 示していただいた3つの例は、とても分かり易く、グループ活動中の様子を見極めるとても良い視点だと思います。次回はいよいよグループ活動の見極め方の佳境に入ります。グループ活動後の教師のあり方について教えていただきたいと思います。
 

(2010年2月22日)

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●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。
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