愛される学校づくり研究会

★このコラムは、日本初(?)の教育コンサルタントとして10年前からご活躍中の大西貞憲さんから、授業を見るための眼力が高まるノウハウをインタビュー形式で学ぶものです。

【第3回】学習に向かう学級の姿勢

onishi_small.gif大西貞憲(授業を見るプロ) tamaoki_small.gif玉置崇(インタビュー)
 

tamaoki_small.gif良い授業が成立するには、学習に向かう姿勢が学級にどれほど育っているかが重要な要素になると思います。育っているかどうかは、学級を2〜3分間も見れば、よく分かると言われます。法則化の向山洋一氏は15秒もあれば分かると言っています。つまり、ポイントがあるということです。
 そこでご質問です。大西さんは学級の学習に向かう姿勢は、どこを見て捉えているのでしょうか。コラムを読む方にとっては、担当学級の学習に向かう姿勢チェックになると思いますので、具体的に挙げていただけませんか。
 


onishi_small.gif向山先生と比較されても困ってしまいますが、私なりの視点を少しお話します。
 教師の発問や指示に対しての子どもの反応は大切なポイントになります。一見落ち着いていて、教師に注目して、学習に対して前向きに見える学級でも、教師の発問に対してあまり反応しないことがあります。子どもたちは発問に対して何か考えているのかもしれませんが、姿勢や表情に大きな変化が見られないのです。そういう学級に限って、発問内容や課題を教師が板書すると一斉に鉛筆を持ちノートに写し始めます。よく躾けられているということなのでしょうが、学習に対して受け身であると感じることが多いのです。人は何かを考えているときにはとっさに反応できません。子どもたちは、次に教師は何をするか、どんな指示があるかに意識を向けているということです。もちろん、何も考えず、また教師にも注目していないよりはずっとよいのですが、自分の問題として考えているときは、たとえ板書は必ずノートに書くように指示されている学級であっても、決して一斉には動かないのです。積極的に学ぶ姿勢が育っている学級では、発問に対して子どもが必ず何らかの反応や活動をします。たとえば復習的な内容を問うのであれば、わかっている子どもは挙手するでしょうし、わかっていない子どもは教科書やノートを開いて答えを調べようとします。周りの子どもに尋ねるかもしれません。ただ教師から発せられる正解を待とうとはしないのです。

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教師からの働きかけ、友だちの発言等に対して、個々の子どもたちがそれぞれに反応をする学級は、学習に対する姿勢が育っている学級だと思っています。些細な反応でよいのです。小さくうなずいたり、首を傾げたり、発表者の方に体を向ける、教科書やノートをちょっとめくってみたり、隣の声にそのことに関してそっと話しかけたりする。そんな姿があちこちで見られることが大切です。また、そういう学級では、子どもたちの反応に対して、間違いなく教師も反応します。
「今うなずいてくれたね。何がわかったの?」 「今うなずいたのは、・・・さんの意見に賛成ということ?」 「・・・さん。何か困ったことあるの?」 「ノートを確かめている人がいるねぇ」 「相談している人がいるね。相談してもいいよ」
 こんな言葉がよく聞かれます。子どもたちの学習に対する姿勢は、間違いなく教師の姿勢が育てるものだと思います。
 

tamaoki_small.gifなるほど! 指導主事による学校訪問があった折りなどは、次のような言葉が聞こえてくる時があります。 「私の授業は3分間ほどしか見ていなかったから、ラッキーだったわ。それも指導主事さんが見ている時に、とても良い発言があってね」  わずか3分間でも、大西さんが示された視点で学級を見れば、この学級は学ぶ学級集団となっているかどうかは、すぐに分かりますね。
 東京大学の佐藤学さんは授業は必ず前から見ますが、教師の発問に対する子どもたちの反応を見るには、前から見るのが最適ですよね。今でも研究授業の時には、椅子が後ろにずらっと並べてある学校があります。またその椅子に1時間中、ずっと座っている指導主事がいたりして・・・。これ以上、話し出すと脱線してしまいますので、この話題はこのあたりにしておきましょう。
 

(2009年8月10日)

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●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「フォーラムin東京」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1979年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、2007年度より愛知県教育委員会義務教育課へ。ICTを活用した授業や学校経営で実績があり、文部科学省発行「教育の情報化に関する手引」作成委員の一人。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分から ない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。