愛される学校づくり研究会

★このコラムは、ベテランの先生方によるリレー方式のコラムです。先輩教師として若い先生方に、「こんなことをしたらうまくいかなかった」といった失敗談を語っていただきます。

【第41回】近藤肖匡 先生
 「失敗から新しいことへの挑戦 〜行事に受け継がれた伝統や想いを伝えるために〜」

教師生活がスタートとして、4年目。大きな行事担当を引き受けることになりました。
 中学校の修学旅行というと、今では東京分散研修が主流になっていますが、今から15年前の修学旅行といえば、我が地域では、物見遊山の班別研修と学級分散研修でした。
 生意気にも、「今までと同じような修学旅行ではつまらない。」「子どもたちがドキドキするような研修をさせてあげたい。」「そうだ、テーマや訪問地を自分たちで決めさせよう」「自分の夢をつかむ修学旅行にしよう」と思い立ったのです。
 初企画ですので、もちろん前例はありません。生徒たちへの指導をお願いするために、電話の応対の仕方や、手紙の書き方、東京23区の電話帳、地図など、必要となるだろうと思うものをある程度用意したのですが、教師側は具体的にどう生徒へ指導を重ねたらよいか、見通しが持てなかったというのが正直なところです。
 その上、訪問条件に「有名人や著名人に会うこと」など無茶苦茶な項目を加え、生徒たちには、アポ取りから、当日の計画、応対の仕方など、一切丸投げ状態にしてしまったのです。
 「○○の電話の対応が悪いと、△△から電話があったぞ」
 「お前は修学旅行で一体、何がやりたいのだ。」
と毎日のように、先輩職員から、批判や文句、さらには、修学旅行が台無しだと揶揄されました。毎日、毎日、失敗を積み重ね、修学旅行当日までには、失敗の山ができたように思います。唯一、学年主任は、「やってみなくちゃわからない。生徒が変わることを信じてがんばろう。」と励ましてくれました。

修学旅行の当日、不安そうに出発した生徒たちでしたが、だれもがキラキラ目を輝かせて宿舎にもどってきたのです。あのときの満足げな生徒たちの目は、今でも忘れることができません。「結果良ければ全てよし」とは思いませんが、最後まで失敗で終わらなかったのがなりよりです。

あれから十数年が流れました。今では「修学旅行は自分たちでテーマを決めていくんだぞ」「職場体験の場所は自分たちで決めるんだぞ」と言っても、子どもたちはうれしそうな顔をしません。当たり前になってしまったから、というわけではありません。
 実は「修学旅行ではどんな目的で研修地を決めるのか」とか、「キャリアスタートウィークと称して、なぜ中学生が職場体験をするのか」といった根本の話をしていないからだと思います。学校行事等で変革を試みるときは、その想いといった根本的なことをきっちりと生徒に伝えますが、長年継続してくると、(特にそれまで問題が起こっていないと)一番大切にしなければならない改革を試みた時の想いを伝えず、表面的なことだけを受け継いでいるように思います。教師は、受け継がれてきた諸行事の根底にある「想い」を熱く語り、子どもたちがさらに輝くように支援していくことが大切だと肝に銘じています。

(2011年3月28日)

失敗から学ぶ

●近藤肖匡
(こんどう・ゆきまさ)

平成8年に教職をスタート。中学校で15年勤務。現在は大府市立大府中学校でホームページ担当。現職主任。専門は数学。「生徒が、そして学校が元気になる」仕掛けづくりを奮闘中。平成17年に文部科学省で研修してから、ユニバーサルデザインを意識した授業づくりに目覚めた。特別支援教育に関わる著書もいくつか手がけている。