愛される学校づくり研究会

★このコラムは、ベテランの先生方によるリレー方式のコラムです。先輩教師として若い先生方に、「こんなことをしたらうまくいかなかった」といった失敗談を語っていただきます。

【第4回】蜂須賀 渉 先生
「初めての研究授業」

4月に初任者として赴任した小学校は、その年の秋に、研究発表会を開催することになっていました。しかし、初任者の私には、研究発表会がどういうものなのか、全くイメージできていません。
 私は、ゴールデン・ウィーク明けの5月上旬、「研究授業」を行うことになりました。教育実習では研究授業をしたことがありますが、初任者としての研究授業は初めてです。社会科の研究発表校でありながら、社会科専攻ではない初任者が赴任したので、さぞかし、心配だったのでしょう。4月中旬から、「指導案の書き方」「教材研究の仕方」などを、ことあるごとに指導してもらいました。
 研究授業は、4年社会科「わたしたちのくらし」の単元です。校区にある「公民館」にスポットを当てました。実は、この授業設定についても、校内の研究部会でしっかりと検討してもらいました。自分一人では、なかなか決定できませんでした。
 公民館の学習ですから、公民館へ事前に見学に行く必要があります。「見学依頼の仕方」「引率の仕方」「結果のまとめ方」など、手取り足取り、教えてもらいました。また、当日の授業に向けての「課題づくり」「中心発問」も検討してもらいました。同僚の先生方の力添えにより、着々と準備が進んでいきました。
 無我夢中でした。張り切っていました。ゴールデン・ウィーク中も、連日、学校に出かけて、準備をしました。指導案の作成、子どものノートへの朱書き、グループごとに調べたことをまとめた模造紙の確認と教室への掲示、板書計画の立案と板書練習、授業で使う掲示物と印刷物の準備、当日の中心発問と第一発表者の選定、・・・など、準備万端です。

 当日は、五月晴れ。いよいよ、研究授業の4時間目です。今や、チャイムを待つばかりです。日頃は、休み時間が終わっても、すぐに教室に戻ってこない子どももいましたが、今日は違います。全員、3分前から、姿勢を正して待っています。
 チャイムが鳴りました。授業の開始です。
 導入では、「公民館で見つけたこと」を話題にして、興味をひきつける話をしました。そして、中心発問をしました。いつもと同じように、一斉に挙手があると思いましたが、挙手はゼロ。目は点です。やむを得ず、次のシナリオです。「では、自分の考えをプリントに書きましょう。」
 ところが、印刷したはずのプリントがない!!そうです。大切なプリントなので、職員室に置いてきてしまったのです!!どうしよう!!
 そのとき、助けてくれたのは、学級の子どもたちです。「ノートに書けばいいよね!」
 その後は、子どもたちの発言に支えられた授業展開でした。いつもは、やんちゃな子どもたちですが、今日は、とても頼もしく見えました。
 授業後の研究協議会では、担任の私は、一切褒めてもらえませんでしたが、子どもたちが褒められました。

 授業は子どもたちのためのものです。教師の都合ではありません。子どもとともに、一生懸命悩み、子どもを信じ、子どもに任せた授業にすることです。
 今も、その思いをもとに、教壇に立っています。

(2007年11月12日)

失敗から学ぶ

●蜂須賀 渉
(はちすか・わたる)

昭和57年、教員生活スタート。算数・数学専攻。愛知県公立小学校6年、公立中学校7年。平成7年より、奈良女子大学附属小学校で、小学1年から小学6年までを連続して持ち上がり指導にあたる。その後、再び、愛知県公立小学校2年、公立中学校2年。平成17年より、愛知県西三河教育事務所指導主事。子ども自ら学習を進める「奈良の学習法」に憧れている。奈良の世界遺産を散策するのも趣味のひとつ。