愛される学校づくり研究会

★このコラムは、ベテランの先生方によるリレー方式のコラムです。先輩教師として若い先生方に、「こんなことをしたらうまくいかなかった」といった失敗談を語っていただきます。

【第1回】玉置 崇 先生
「だれも動かなかった清掃指導スケジュール」

今も忘れられない新任のときの失敗談です。
 新任のときの校務分掌は、清掃指導でした。校務分掌表をみると、清掃担当はなんと自分ひとり。新任なのに、自分ひとりに清掃指導を任せてもらえたという喜びで、張り切って動き始めました。
 手始めに、昨年度の清掃指導の反省を読んでみると、「教師が清掃の時間になっても、担当場所へ行かないで、教室でノート点検などをしているのが問題である」という記述が目に留まりました。「この問題を解決するのは簡単!教師の清掃指導タイムスケジュールを作ればよい」という結論に至ったのです。

 数日後には、すべての教師の清掃時間中の行動表ができました。例えば、A先生は、清掃開始から5分間は自分の教室で指導、その後、3分間で図書室へ移動、そこでの清掃指導を5分間、さらに5分間で特別教室棟1階トイレへ移動して、そこで清掃指導を5分間というように、詳細なスケジュール表を作ったのです。
 しかも教師同士がお互いに動いていることを意識するために、「A先生とB先生は特別教室棟1階廊下で、何時何分に出会う」ということまで明記したのです。

 自分としては完璧な案でした。「先生方がこれにしたがって動いてくれれば、清掃指導は完璧にできます」と自信をもって専門指導部会や職員会議で提案しました。特に異論はなかったと記憶しています。

 提案は通ったものの、当然、結果は私の思惑どおりにいきませんでした。清掃時間になると、あちこちと動き回る先生方の姿を想像していたのですが、なんら変化がなかったと言ってもいいほどです。気のいい先輩の数人は、私が提案した案のように動いていただいたように思いましたが、それも数日間だけだったと思います。

 さて、なぜうまくいかなったのでしょう。その当時は、スケジュールどおりに動いてくれない先生に腹を立てていただけで、自分を振り返ってみることなどしなかったように思います。
 今なら、うまくいかない理由が分かります。それは、担当として大切なことを伝えることを忘れていたからです。先生方に清掃場所に行ってもらうメリットをしっかりと伝えるべきだったのです。もちろん「清掃をさぼっている子どもが発見できますよ」などということは言いません。今の私なら、「清掃時間に黙々と取り組んでいる子どもがいますよ。教室では、違った面を見せる子どもがたくさんいます。私たちは、できる限り子どもたちの側にいって、その子どものよさを褒めてやりましょう」と呼びかけます。

 さて、それにしても、「すべての先生のスケジュールを作って動かしてやるぞ」なんて・・・。生意気な新任だったことは間違いありません。でもこんな新任がいたら、校長としては、とても頼もしいのですけどね。

(2007年10月1日)

失敗から学ぶ

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

昭和54年、教員生活スタート。小学校教諭3年、中学校教諭16年、教頭6年、校長3年、平成19年度より愛知県教育委員会義務教育課指導主事。専門は数学。大学時代には落語研究会に所属。今でも高座に上がりご機嫌をうかがっている。「やってみなきゃ分からない」をモットーに、「思いついたら、すぐ動き出す」ところもあって、失敗は数知れず。そのくせ、ちょっとしたミスで、いつまでもくよくよ悩むタイプ。眠れぬ夜も多い。
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