愛される学校づくり研究会

【第1回】はじめの一歩は環境整備

19年前、新任で赴任した中学校は、私にとってセンセーショナルだった。なぜなら、当時校内暴力が隆盛だったため、教室には机といす、みかんの汁で汚れた黒板、穴が空いた所を修理した茶色い壁しかなかったからである。その他、ガラスが多数割れ、掲示物は破られ、時には燃やされ、生徒昇降口の扉はハンマーでぼこぼこになるなど、常に生徒指導に追われていた。

 したがって、私の新任研修の第一歩は、校内を巡視し、壊れたスイッチを修理することから始まった。そんな時、私は先輩の先生方から校内環境や教室環境の大切さを学んだ。荒れた花壇に生徒とともに花を植えたり、生徒手作りの掲示物を貼り、壊れた物はその日のうちに修理した。すぐに、とはいかなかったが、荒廃度は徐々に薄れ、数年後には見事に再生することができた。

 先輩の先生方から聞いた語録は、私の良き財産である。例えば、

「関わる生徒のうち、3割は自分と良く合う。1割はなかなか合わないため指導が入りにくい。問題はあとの6割をこちらに向けることだ。私たちが日々、真剣に向き合っている姿を見せないと、改善は見られない」

「難しい教育書の定石はいらない。最新の情報は雑誌を見なさい」
(と言って『月刊 生徒指導』を渡された)

「教師の手と目は2つしかない。しかし、学級の生徒40人と協力すれば、80の手と目があるから、環境は充実した物が作れるし、いじめは早期発見できる」

などである。

 「一緒に作ろう」と呼びかけると、生徒たちはそれぞれに工夫して一生懸命作ってくれる。今では、前年度の掲示物を保管しておいて、次年度の作品づくりのサンプルにしている。下のように掲示物は班ごとに分担し、年度初めに作成する。掲示物がはがれたらすぐに直すし、傷ついた時は「掲示物が傷ついたら、次は人が傷つく」と話して学級全体の場で注意する。
 

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 次に示すのは、私の座右の銘となっている学校荒廃深度表(89年度5月号『月刊 生徒指導』)である。問題行動があるたびに見て、次の手を考えている。
 

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 子どものころTVドラマ『熱中時代』を見て、水谷豊の演技にあこがれ、教師になった。挿入曲の中で「…先生のそばにいるだけで、爽やかな風のようだよ〜〜〜」の言葉が好きである。道徳がうまくできないので、決して金八先生にはなれないと思っている。
 初回にしては、やや重い内容になってしまったが、爽やかな風を吹き込むにはその前提として、環境整備が必要なのである。

(2005年5月9日)

坂下憲司先生title.gif

●坂下 憲司
(さかした・けんじ)

愛知県小牧市立光ヶ丘中学校教諭。社会科担当。授業力抜群。素材の料理の仕方などがユニークで、いわゆる坂下流授業にあこがれる若い教師多数。もちろん、授業ばかりではなく、学級経営、生徒指導、部活指導など、どの分野においても安定した力を発揮。これまでもさまざまな分掌を担い、学校になくてはならない存在になっている。女性職員からは私の奥さんにしたいくらいの気遣いもしてくれる人!と評判。