愛される学校づくり研究会

校長塾 経営力を高めるためのポイント

★このコラムは、平成25年3月から9月まで、26回にわたり、日本教育新聞に連載をしてきた「校長塾 経営力を高める最重要ポイント」の続きです。「ぜひ継続を」という声をいただき、この場をお借りすることにしました。校長としての様々な実践事例を紹介しながら、私が考える学校経営力を高めるためのポイントを示していきたいと思います。主な対象は、若手管理職やミドルリーダーのみなさんです。「なるほど!こういう方法があるのか」「このようなことに心掛けるべきなのか」と、心の中にストンと落としていただけるコラムになるようにいたします。どうぞよろしくお願いします。

【 第4回 】やってみなけりゃわからない
      ―挨拶カードで意識を高める―

平成16年度から3年間は、小牧市立光ヶ丘中学校長でした。そのときの実践です。

赴任当初、校門に立って挨拶をしていると、生徒の挨拶に元気がないことが気になりました。生徒指導主事にどう思うかと聞くと、この学校の生徒たちの挨拶はもともとこのような様子だというのです。主事は問題と捉えていませんでしたが、私からすると、朝からエネルギーが欠乏しているような状況で、これはなんとかしなければと思ったのです。

教職員に「生徒が元気よく挨拶できるようにさせてください」と指示することはできますが、それで問題が改善するとは思えません。東京の五反野小学校が挨拶カードを作り、地域の方々とともに子どもを育てている実践を参考にすることにしました。光ヶ丘中学校オリジナルの挨拶カードを作成したのです。もちろん私の手仕事です。カードには、「素敵な挨拶をありがとう」と言葉を入れ、「〇さんから□さんへ」(〇、□には名前を記入する)という枠を印刷しました。

そして、玄関にこのカードを数百枚置いて、来校者に次のように訴えました。

「助けてください。我が校の生徒は元気な挨拶ができません。来校された方は、この挨拶カードを数枚持っていただき、元気な挨拶をした生徒がいましたら、〇のところへご自身の名前を書き入れて渡していただきたいのです」

生徒たちには集会で、「来校者の方に元気な挨拶ができるとその方の名前が書かれたカードがいただけます。カードをもらった人は□のところへ名前を書いて、校長室前の箱にカードを入れてください」と話しました。カードが減れば減るほど改善がされていると判断したのです。

生徒指導主事からは、「校長先生、中学生ですよ。カードごときで動きませんよ」と言われました。自分自身もそうかもしれないと思いながら、「やってみなけりゃわからない精神」で始めました。

その結果はどうだったでしょうか。大成功だったのです。まず1年生男子の中で、カード集めがブームになったのです。来校者の姿を見るや否や、「おはようございます」「こんにちは」という元気な声が校内に響くようになりました。教職員もカードを持って校内を歩くことにしました。廊下でも爽やかな挨拶が飛び交うようになりました。次第に女子や他学年にも広がり、元気な挨拶をすることが、我が校では当たり前の空気となったのです。もちろん、登下校中に地域の方に出会っても、元気よく挨拶ができるようになり、お褒めの声をいただくようになりました。

「やってみなけりゃわからない」と強く感じた出来事でした。私が様々なことに挑戦しているのも、こうした体験があるからなのです。

(2013年11月18日)

準備中

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1956年生まれ。1979年教員スタート。小学校、中学校教諭を経て、1998年教頭、2004年校長に就任。2007年より愛知県教育委員会指導主事、主査、海部教育事務所長を経て、2012年に小牧市立小牧中学校長に就任。学び続ける子供を育てるために、地域・保護者と一体となって「親子で学ぶ小牧中特別講座」など独自の取り組み実践中。
著書には、「玉置流・学校が元気になるICT活用術―ICTは学校力向上ツール 」(プラネクサス)「学校を応援する人のための学校がよくわかる本(1)(2)」(プラネクサス)「スペシャリスト直伝!中学校数学授業成功の極意」(明治図書)など多数。
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