★新教育コラム「学校マネジメント考」開始にあたって
管理職には、特に「学校マネジメント力」が必要であると言われるようになりました。ところが、愛される学校づくり研究会の中で「学校をマネジメントするとは具体的にどういうことか」ということを話題としましたが、お互いになかなか明確に示すことができませんでした。
そこで、それぞれが考える「学校マネジメントの具体例」をリレーで示しながら、考えを深めていくことにしました。皆さんからもご意見をいただきたいと思い、いわば研究会の内部資料ですが、その公開もかねて、この教育コラムを始めました。
学校マネジメント考【8】
― 小牧市立北里中学校教頭 永田 春季
多くの諸先生方の学校マネジメントに対するお考えを、毎回感銘深く拝見することができ大変勉強になりました。私はこの3年間、本校が取り組んできた授業改革をまとめたいと思う。
小牧市が取り組んでいる「学び合う学び」を受け、授業改革による同僚性の構築と学力向上を目指した取り組みを、どのように具現化し、職員に進めていったかを述べたいと思う。
本校は、平成21年・22年の2年間、小牧市から「学習指導」の研究指定を受けたことにより、職員の気持ちが一つになることができた。学校長から、育てたい生徒像と担うべき教師集団の二つが提示された。ここでは教師集団に焦点を当て、まとめたいと思う。まずは分析からである。
当時の教師集団の問題点は、
1 学び合いを取り入れた授業のイメージがない |
2 授業を変えることへの抵抗感・不安 |
3 形(コの字型机の配置、4人班)にとらわれ、本質を見失う |
4 人の話が聞けない教師集団 |
5 互いの言葉がつながらない研究協議 |
といった点があげられた。
これらを解決していく手立てを4役会で相談し、以下のような作戦を立てた。
A 意思統一のためのプレゼンテーション |
B 理想とする授業のデモンストレーション |
C 授業の位置づけ |
D 机配置の変更(時期をどうするか、いつから実施するか) |
E 研究協議を変える |
F 授業を語る会 |
A 意思統一のためのプレゼンテーション
教師向けと生徒向けの2本を準備して取り組んだ。教師向けには、授業改革には欠かすことの出来ないキーワードを共有化する短いことば(つなぐ、もどすなど)。生徒向けには、学びのスタイルの共有化(授業スタイルの変更)を、強制力をもった改革になるようにプレゼンテーションを行った。これらは毎年、年度初めに必ず実施した。
B 理想とする授業のデモンストレーション
イメージなくして改革などあり得ないという観点から、まずはどんなものなのかを年度初めに教務主任が授業を行った。そのことによって、授業イメージの共有化を図ることができ、その後の研究協議で、授業に対する疑問をとことん話し合うことができた。
C 授業の位置づけ
実際にイメージはあっても、どのように進めて行けばよいかがわからない。また単元が変わるたびにイメージが持てないなど、多くの教師が授業に対して不安や取り組み方がわからないということを話すようなった。自分の授業は本当にこれでいいのか疑問や評価が欲しかったようである。そこで、校長や教務主任が授業を訪問し、どこにどんな「学び合い」があったのかを指摘(生徒のつぶやきや進め方、発問の仕方など授業者が気づかないことを中心に)。つまり、生徒を見る目を養うことや意図した指名によって流れが変化することなど、授業参観記録(まなびを訪ねて)を全員に配布することで、共有化をはかった。
D 机配置の変更(どこで実施する)
一斉型授業スタイルから、コの字型授業スタイルへの移行は、納得するまでしなかった。いい加減な状態で、形だけに囚われたくなかったからである。生徒相互が顔を向き合わせることで、生徒の視線が絡み、互いの言葉がつながることを体感するまでとした。結果的には1年半後に全クラスがコの字型授業スタイルに変更した。
E 研究協議を変える
- Before
- (1)授業の内容や授業者への評価が中心
- (2)ベテラン教師の授業論が多い
- (3)授業者が質問に答える
- (4)当たり障りのないコメント
- (5)1時間を超える長い話し合い
- (6)授業者だけが負担感を持つ
- After
- (1)子どもの学びに焦点を当てた話し合い
- (2)立場を越えた話し合い
- (3)授業への疑問を全員で考える
- (4)同じ教師として真剣に考えたコメント
- (5)制限時間を45分とし、より効果の上がる話し合いを目指す
- (6)司会や授業・研究協議の記録を交代で担当し、当事者意識を持って授業研究に臨む
なぜつながらない。なぜ授業者だけが負担感を感じる。司会者の流し方はどうだったなど、一回一回の研究協議を終える度に、教務主任と話し合い、作戦を練った。誰もが感じたことや疑問を言いたいばかりでいたように思う。そのため、わかっているものが会を重ねる度に修正に入った。また、司会者との事前打ち合わせも必要であった。月一回の協議会をどのようにコーディネートするか、司会者・授業記録・協議会記録・ビデオ撮影・座席など、誰にするか細かく計画することが必要であった。当然、授業も研究協議も同じスタイルであることや管理職も指導主事も一緒に入って共に話し合うことは前提である。
F 授業を語る会(授業前にみんなでその授業について話し合う会)
教科によっては、担当が1名のため、教科部会で授業作りの相談ができないという現実に対応するために、こんな目的を掲げ実施した。
(1)教科の違いを超えて、参加者で研究授業のアイデアを出す
(2)生徒の立場になって、生徒がつまずきそうな場面を出し合うことで、思想を助ける手立てを考える
(3)授業者が挑戦したいことを、事前に把握する
(4)「授業を見る視点を共有化する
生徒が下校した後の時間に設定し、参加者は毎回自由参加とし、制限時間を設け、会での意見やアイデアは特に授業に反映させなくてもよいことをルールとし、最終決定権は授業者に委ねることにした。
現在、本校の教師の変化は、研究協議では、役職や教科に関係なく、自由に意見を交わし合えるようになったこと。公開授業以外でも、日常的に授業を見合う者が増えたこと。学年主任・副主任が率先して授業を公開していることである。
今後の課題として、研究協議において、授業の質をどこまで語れるか。若手の技能をいかに高めるか(3年間で新任5名)。授業研究へのモチベーションの維持をどうするかがこれからの問題であるが、いずれにせよ、計画的・系統的に作戦を練ることで、集団は向上することが目に見えてわかった。
私が思うマネジメントとは、変化していくことだと感じた。そして、各担当者が計画的に実践し、練り直しそしてさらに実践しているか、実行しているかを見定めることが管理だと感じた。
(2012年3月13日)