★新教育コラム「学校マネジメント考」開始にあたって
管理職には、特に「学校マネジメント力」が必要であると言われるようになりました。ところが、愛される学校づくり研究会の中で「学校をマネジメントするとは具体的にどういうことか」ということを話題としましたが、お互いになかなか明確に示すことができませんでした。
そこで、それぞれが考える「学校マネジメントの具体例」をリレーで示しながら、考えを深めていくことにしました。皆さんからもご意見をいただきたいと思い、いわば研究会の内部資料ですが、その公開もかねて、この教育コラムを始めました。
学校マネジメント考【2】
― 新城市教育委員会 小西 祥二
「(1)現状を把握する」ことに続いて「(2)原因を特定する」について考えます。
しかし、現状を作り出しているのは、いくつもの事柄があり、それが絡み合い、いろいろな「原因のようなもの」が浮かんできます。
また、現状から課題を絞っていく段階で、「大きな声で挨拶をしたい」「笑顔のある授業にしたい」「内容にまとまりのある発言をしたい」など、少なからず「(3)目標を設定する」ことが意識されています。そのために、しっかりと原因を問うことなく、現状が「原因」であり、その解消を「結果」として活動を始めてしまうことも多いと感じています。
そのために、あれこれ並べた総花的なもので満足してしまいます。
子供たちの現状は「挨拶がなかなかできない」という「外」の姿、あいさつができない「原因」は子供を動かさない「内」の姿です。
その挨拶ができない「外」の姿は、
- 登下校のとき 子供同士が… 大人に… 地域の人に…
- 授業のとき 「はい」の返事が…
- 課外活動で 仲間同士で… 外部施設に出かけたときに…
- 家庭に戻って 起きた時に… 出かけるときに…
など、いろいろな場面で見ることができます。それらすべてをとらえて「挨拶がなかなかできない」と感じ、それが「挨拶ができない」問題となっています。
まず、場面を絞っていきます。「外」の姿の一つを取り上げると、「登下校での挨拶ができていない」。その場面のなかでも「登下校で地域の人に挨拶ができていない」と絞ることができます。
さて、場面を絞ったことで原因が見えてくるかというと、「恥ずかしいから」などと想像の域を出ず、簡単ではありません。
原因となる子供の「内」の姿を見つけられないか、他の場面と比べてみます。
- 学校内で会った友達に「おはよう」が言えている
- 家族に「行ってきます」と言っている
- 外部講師の方に「こんにちは」と言える …
これで「内」の姿が見えてくるかというと、ちょっと難しい。だからといって、アンケートをしても、都合のよい答えは返ってくるでしょうが、「内」の姿は深い所へ隠れていってしまいます。
教職員、地域の人の声を聞き、さまざまな「外」の姿をつなぎあわせます。
外部講師に挨拶ができているので、大人に対して恥ずかしがって地域の人にあいさつができないのではなさそうです。「おはようございます」と「こんにちは」の違いでもないようです。
改めて「外」の姿を観察すると、子供たちは、友達と話をしていたり、手にした虫を逃がすまいと夢中になっていたりして、周囲の人に注意が向いていません。でも、“いつもの店”では、おばさんに挨拶をしています。
どうやら、「恥かしさ」はあまりなさそうです。地域に取材に出かけた時も、物おじせずに話ができる子供たちだったことを思い出しました。「大人が見えていない」「出会ったことに気づいていない」という子供の姿が、はっきりしたものに見えてきます。
- 地域の人がいること
- 地域の人であること
- 毎日いる人か、今日だけいる人か
それに気づくことができていないから、「あいさつをする場面」という判断がなく行動のスイッチが入っていないのです。
ゴミを拾う場面に似ています。「ゴミを拾わなかった」という事実は、ゴミが拾えない道徳心の欠如した子供だからではなく、床にあるゴミに気づかないので行動しないだけです。
「挨拶がなかなかできない」ことの原因を、「見えない」、「気づいていない」、また「知らない」ことと特定して、次の「(3)目標を設定する」に移っていくことにします。
(2011年7月11日)